ECサイトの広告とは?種類一覧と選び方・少額から始める運用手順

ECサイトの広告とは?種類一覧と選び方・少額から始める運用手順

ECサイトの広告とは?種類一覧と選び方・少額から始める運用手順

ECサイトの広告は、指名検索に応える「検索型」、新規層に見つけてもらう「発見型」、離脱者を追いかける「呼び戻し型」の3層で考えると整理できます。この記事ではECサイト運営者向けに、広告の種類、見るべき指標、媒体の選び方、少額から始める手順を解説します。

ECサイトの広告の全体像

ECサイトの広告は、ユーザーの購買意欲によって3つの層に分けて考えると整理しやすくなります。指名検索や比較検討まで進んでいる顕在層、まだ商品を知らない潜在層、一度サイトを訪れたものの購入に至らなかった離脱者です。

顕在層には、検索キーワードに連動するリスティング広告やGoogleショッピング広告が向いています。すでに欲しいものが決まっているユーザーに、探しているタイミングで届けるアプローチです。指名検索を持つユーザーは、他の層に比べて購入までの距離が近いという特徴があります。競合が少ないキーワードであれば、クリック単価を抑えやすい傾向もあります。

潜在層には、SNS広告やディスプレイ広告による発見型のアプローチが向いています。まだ商品を知らないユーザーに、興味関心や似た属性をもとに広告を届けます。この層は、指名検索の層に比べて広告への反応が読みにくく、クリエイティブの見せ方による差が出やすい面があります。興味関心データや類似ユーザーの機能を使うと、まだ接点のない新しい顧客層にもリーチを広げられます。

離脱者には、リターゲティング広告やリマーケティング広告で呼び戻します。サイトを訪れた、あるいはカートに商品を入れたのに購入しなかったユーザーに、再度広告を表示する方法です。一度興味を持ったユーザーへの再アプローチのため、新規層向けの広告よりもコンバージョン率が高く出やすい傾向があります。広告の表示回数に上限を設けないと、同じユーザーに広告が表示され続けてしまう点には注意が必要です。

この3層のどこに予算を配分するかが、ECサイトの広告設計の出発点になります。指名検索の量が少ないうちに発見型の広告へ予算を寄せすぎると、認知は広がっても購入につながりにくくなります。逆に、指名検索が十分にあるのに呼び戻しだけに頼っていると、新規顧客の獲得が頭打ちになります。

この3層の考え方は、認知・興味・比較・購入というマーケティングの基本的な流れとも重なります。指名検索層は購入に近い段階、発見型でアプローチする潜在層は認知や興味の段階、呼び戻しは比較の途中で離脱したユーザーへの再アプローチにあたります。事業のフェーズによっても、どの層に重心を置くかは変わります。指名検索がまだ少ない立ち上げ期は発見型への投資が中心になり、指名検索が育ってきた段階では、検索型や呼び戻しの広告で刈り取りを強化する流れになります。Shopifyなどのカートで運営している自社ECサイトでも、他のカートシステムを使っている場合でも、この3層構造の考え方自体は共通しています。次の章では、それぞれの層で使う広告の種類を具体的に見ていきます。

Shopify 公式サイト

※出典:Shopify

ECサイトで使う主要広告の種類

ここでは、ECサイトの集客で使われることが多い広告を種類別にまとめます。同じ広告でも、向いている商材や役割が異なるため、特徴を理解したうえで組み合わせを検討します。

リスティング広告とGoogleショッピング広告は、どちらも検索結果に表示される点は共通していますが、見せ方が異なります。リスティング広告はテキストで訴求し、ショッピング広告は商品画像や価格をそのまま表示します。商品の見た目で違いが伝わりやすい商材は、ショッピング広告のほうがクリックされやすい傾向があります。

広告の種類

特徴

向く商材

リスティング広告

検索キーワードに連動して表示されます。購入意欲が高い顕在層に届き、クリックされた分だけ費用が発生する課金方式です。

指名検索がある商材、比較検討の期間が短い消耗品

Googleショッピング広告・P-Max

商品画像や価格を検索結果に表示します。P-Maxは複数の配信面をまとめて自動配信する広告タイプです。

商品点数が多く、画像で違いが伝わる商材

Meta広告(Instagram・Facebook)

ビジュアルでの訴求に強く、興味関心や類似ユーザーを軸にした配信ができます。

写真や動画で世界観を伝えたい商材

TikTok広告

動画中心で、UGCに近い自然な見え方の広告が受け入れられやすい面があります。

使用シーンを動画で見せやすい商材

LINE広告

国内の利用者が多く、友だち追加後のメッセージ配信と組み合わせやすい広告です。

リピート購入を前提とした商材

ディスプレイ・リターゲティング広告

サイト訪問者やカート離脱者に再度アプローチします。潜在層への認知拡大にも使えます。

検討期間が長い商材、カート離脱が多いサイト

Amazonなどモール内広告

モール内の検索結果や商品ページに表示され、購入直前のユーザーに届きます。

モールにも出品している商材、比較されやすい定番カテゴリ

アフィリエイト広告

成果報酬型で、メディアやブロガーに紹介記事を掲載してもらいます。実際に売れた分だけ報酬を支払う仕組みです。

比較記事との相性がよい商材

自社ECサイトの場合、まず顕在層向けのリスティング広告やショッピング広告から着手し、その後にSNS広告やディスプレイ広告で潜在層に広げていく進め方が多く見られます。表の広告を先ほどの3層に当てはめると、リスティング広告とGoogleショッピング広告・P-Maxは指名検索層、Meta広告やTikTok広告は発見型、ディスプレイ・リターゲティング広告は呼び戻しに対応します。LINE広告やアフィリエイト広告、モール内広告は、これらと組み合わせて使う位置づけになります。全ての種類を同時に始める必要はなく、事業のフェーズに応じて段階的に増やしていく進め方が現実的です。

EC広告で見るべき指標

EC広告の効果測定では、ROAS(広告費用対効果)を中心に見る場面が多くあります。ROASは、広告経由の売上を広告費で割った数値です。ただし、ROASの数値だけを見ていると、粗利を考慮しない判断につながります。

そこで重要になるのが、損益分岐ROASという考え方です。損益分岐ROASは「100÷粗利率」で求められ、商品の粗利率から逆算できます。損益分岐ROASの逆算方法は別記事で詳しく解説しています。

たとえば粗利率が40%(0.4)の商品だと仮定します。この場合、損益分岐ROASは100÷0.4でおよそ250%です。実際のROASがこの数値を下回ると、広告費が粗利を上回り赤字になります。粗利率が高い商材ほど、この基準は低くなり、広告費をかけられる余地が広がります。

ROASに加えて、CPA(顧客獲得単価)とLTV(顧客生涯価値)も合わせて見ておきたい指標です。CPAは、広告費をコンバージョン数で割って求めます。1件の購入や会員登録を獲得するのにかかった費用を示す指標です。

たとえば広告費が10万円で、コンバージョンが20件だったと仮定します。この場合のCPAは10万円÷20件で5000円です。この5000円が、商品の粗利やLTVに対して見合う水準かどうかを、損益分岐ROASとあわせて確認します。

単発購入が中心の商材はCPAとROASを重視します。1回の購入で採算を合わせる必要があるため、損益分岐ROASを下回らないかを都度確認します。リピート購入が見込める商材は、LTVを踏まえて初回購入時点のCPAをどこまで許容するかを判断します。初回の購入だけでは赤字でも、その後のリピートを含めた累計購入額で採算が合えば、広告費を投じる判断ができます。

たとえば、1人の顧客が平均して3回リピート購入し、1回あたりの購入額が5000円だと仮定します。この場合のLTVは5000円×3回で15000円です。粗利率が40%なら、生涯を通じた粗利はおよそ6000円になります。初回のCPAをこの範囲に収まるように設計する、という考え方もできます。

ROASやCPAは、日次では数値がぶれやすくなります。少額運用のうちは、週次で確認する進め方のほうが判断しやすくなります。

媒体選びの考え方

どの広告媒体から始めるかは、次の4つの軸で考えると判断しやすくなります。

  • 商材単価:単価が高いほど、1件あたりにかけられる広告費の上限も上がります。単価が低い商材で単価の高い媒体を使うと、CPAが合いにくくなります

  • 粗利率:粗利率が高いほど、損益分岐ROASのラインは下がります。粗利率が低い商材は、広告費をかけられる余地がそれだけ小さくなります

  • リピート性:リピート購入が見込めるほど、初回のCPAを高めに許容しやすくなります。単発購入が中心の商材は、初回で採算を合わせる必要があります

  • ビジュアル映え:写真や動画で違いが伝わる商材ほど、SNS広告との相性がよくなります。機能や仕様の違いが中心の商材は、検索広告のほうが向いている場合があります

この4軸の組み合わせ方を、仮定を置いたパターンで見てみます。実際の商材にそのまま当てはまるとは限らないため、自社の数値で確認しながら調整することが前提です。

単価が低めで消耗品を扱っており、リピート購入が中心の商材だと仮定します。この場合は、指名検索を取りこぼさないリスティング広告が候補になります。あわせて、購入後の顧客にはLINE広告でアプローチする組み合わせも検討できます。単価が低い分、初回のCPAを抑えつつ、リピートで採算を合わせる設計になります。

単価が高めで、写真や動画で世界観を伝えやすいアパレルやコスメ系の商材だと仮定します。この場合は、Meta広告やTikTok広告で新規層に発見してもらう進め方が候補になります。サイト訪問者には、リターゲティング広告で追いかける組み合わせも考えられます。ビジュアル訴求が効きやすい商材ほど、発見型の広告に予算を寄せる余地があります。

単価が中程度で、他サイトとも比較されやすい家電やガジェット系の商材だと仮定します。この場合は、Googleショッピング広告やP-Maxで比較検討中のユーザーに届ける進め方が候補になります。モールにも出品しているなら、Amazon広告を併用する方法も考えられます。比較検討期間が長い商材は、リターゲティング広告を組み合わせて離脱者を追う設計も選択肢になります。

いずれのパターンも、実際の数値を見ながら配分を調整していくことが前提です。最初から一つの組み合わせに決め切る必要はありません。

また、これらの軸は一度決めたら固定するものではありません。新商品の追加や価格改定があれば、単価や粗利率も変わるため、媒体の組み合わせも定期的に見直す対象になります。ShopifyでD2Cブランドを運営している場合も、他のカートで自社ECを運営している場合も、この4軸に沿って商材を分類すると、媒体の候補を同じように絞り込めます。

広告と売上データをつなぐ

広告の管理画面に表示されるコンバージョン数は、注文が発生した時点の数値です。その後の返品やキャンセルは反映されないため、広告経由の実際の売上とはずれが生じます。EC事業者にとっては、どの広告がどれだけ実売上に貢献しているかが見えにくい状態になります。

このずれを把握するには、広告データとECカートの注文データをつなぐ仕組みが必要です。返品やキャンセルを反映した後の実売上で、広告の成果を見られるようになります。あわせて、どのチャネル経由の注文が返品されやすいかも把握しやすくなります。

媒体ごとのROASを比較する場面でも、返品が多いチャネルほど、管理画面上のROASと実際の利益が乖離しやすくなります。たとえば、あるチャネルの管理画面上のROASが300%で、そのチャネル経由の注文の返品率が20%だったと仮定します。返品分を差し引くと、実質的なROASはおよそ240%(300%×0.8)まで下がります。管理画面のROASだけを見ていると、この差には気づけません。

CascadeはShopifyと連携し、広告データと売上データを紐づけて分析できます。オーガニック検索やSNS、広告など、チャネルごとのセッション数・注文数・コンバージョン率を一覧で比較できるほか、商品・SKU単位の売上や返品率も確認できます。

少額から始める手順

予算が限られている場合は、次の順番で進めると広告費を無駄にしにくくなります。最初から複数の媒体や指標に手を広げるより、範囲を絞ったほうが判断の材料が早く貯まります。

  • まず1媒体に絞って配信します。複数媒体に予算を分散させると、1媒体あたりのデータが貯まりにくくなり、判断に必要な件数が集まるまで時間がかかります

  • 配信を始める前に、コンバージョンの計測設定を整えます。計測が不正確なままだと、後から広告を評価するための判断材料が集まりません

  • クリエイティブは、商品写真とUGCに近い使用シーンの素材を組み合わせて用意します。使用シーンが伝わる素材は、まだ商品を知らない潜在層への訴求に役立ちます

  • 配信の上限予算をあらかじめ決めておきます。数値を見ながら調整する前提でも、想定外に消化が進むリスクを抑えられます

  • 運用中は、週次で見る指標をROAS・CPA・消化金額の3つ程度に絞ります。見る指標が多すぎると、判断が遅くなります

SNS広告から着手する場合は、Instagram広告の始め方を先に確認しておくと、配信設定でつまずきにくくなります。この順番で一つずつ進めることで、少ない予算でも判断材料になるデータを早く貯められます。一定期間配信したら、実際のROASと損益分岐ROASを見比べて、次の1媒体を追加するかどうかを判断します。

少額とはいえ、広告費は立派な事業経費です。フリーランスや個人事業主としてECを運営している場合、経費をどこまで使ってよいかという考え方は、お金と仕事の情報メディア「おかねチップス」の「フリーランスの経費っていくらまで使っていいの?」という解説が参考になります。

お金と仕事の情報メディア「おかねチップス」公式サイト

※出典:おかねチップス

よくある失敗

ECサイトの広告運用では、次のような失敗がよく見られます。

  • 予算を全ての媒体に薄く分散させ、どの媒体でも十分なデータが貯まらない。判断に必要な件数が集まらず、良し悪しの評価ができないまま配信が続きます

  • ROASの数値だけを見て、粗利を考慮せずに広告費を追加してしまう。ROASが高く見えても、粗利率次第では赤字になっている場合があります

  • リターゲティング広告だけに依存し、新規層を増やす広告を止めてしまう。追いかけられる訪問者の母数が増えず、売上の伸びが頭打ちになります

  • コンバージョン計測タグの設定に不備があり、実際の成果とレポートの数値がずれている。数値がずれたまま予算配分を判断すると、成果が出ている広告を止めてしまうこともあります

これらの失敗の多くは、指標や配信先を一つに絞り込めていないことが共通の原因です。まず何を見て判断するかを決めてから、媒体を増やしていくと防ぎやすくなります。

よくある質問

ここでは、ECサイトの広告についてよく聞かれる質問をまとめます。

最初の1媒体はどれを選べばいいですか?

商材の単価や粗利率、リピート性、ビジュアル映えという4つの軸で判断します。指名検索がある商材ならリスティング広告、写真映えする商材ならSNS広告というように、商材の特徴に合わせて選ぶ考え方になります。迷う場合は、まず指名検索の量を確認するところから始めます。

広告予算はいくらから始められますか?

商材やCPAの水準によって幅があるため、金額を一律には決めにくい部分です。目安としては、週次でコンバージョンの傾向が読み取れる件数が貯まる規模から始め、数値を見ながら調整していく進め方になります。最初から大きな予算を投じるより、少額で計測の精度を確認してから広げるほうが、無駄になりにくい進め方です。

モールに出店していても自社EC広告は必要ですか?

モールでの販売と自社ECでの販売は、集まる顧客データの扱いが異なります。自社ECに広告で集客すると、購入者データを自社側で保有でき、リピート施策やLTV分析に使えるようになります。モールでの販売実績だけでは見えない、チャネル別の集客状況も把握しやすくなります。両方のチャネルを併用しながら、それぞれの役割を分けて考える運営者も多く見られます。

リスティング広告とSNS広告、どちらを優先すべきですか?

指名検索の量が一定あるなら、まずリスティング広告で取りこぼしを防ぐ考え方になります。指名検索がまだ少ない、あるいは新規層への認知を広げたい場合は、SNS広告を優先する考え方になります。両方の広告を並行して試しながら、CPAとROASの実績で配分を見直していく進め方もあります。配信量を増やす際は、どちらか一方に偏らせるより、比率を少しずつ調整していくと、急な数値悪化にも気づきやすくなります。

Shopifyと連携できる広告分析ツールはありますか?

Shopifyと連携できる広告ツールはいくつかあり、選ぶ際は広告の成果データとストアの売上データを統合して見られるかがポイントです。広告運用AIエージェント「Cascade」はShopify連携に対応しており、広告のクリックやコンバージョンだけでなく、実際の売上とひもづけて費用対効果を判断できます。BASEやカラーミーショップなど、Shopify以外のECサービスとの連携にも対応しています。

ECサイトの広告運用にはどんなツールが向いていますか?

ECサイトの広告運用では、複数媒体の管理と売上データとの統合分析に対応したツールを選ぶのがおすすめです。Cascadeは、Google・Meta・Amazonなど主要媒体の広告運用をAIが支援し、Shopifyなどのストアデータと合わせて費用対効果を確認できます。ツール選定の際は、利用中のECカートとの連携可否を最初に確認すると失敗しにくくなります。

まとめ

ECサイトの広告について調べ始めたばかりの運営者は、どの種類の広告から手をつければよいかで迷いがちです。広告の種類や指標は数が多く見えますが、まずは3層のどこに課題があるかを把握するところから始めます。ECサイトの広告は、指名検索を取る層、新規層に発見してもらう層、離脱者を呼び戻す層という3層で全体像を整理できます。あとは、商材の特徴に合わせて媒体を選ぶことがポイントです。ROASは損益分岐の考え方とあわせて見て、粗利を踏まえた判断を続けます。予算が限られているうちは1媒体に絞り、計測の精度を確認しながら広げていくと、無駄な広告費を抑えやすくなります。広告データと売上データを一元管理しながら運用したい場合は、Cascadeのようなツールで広告と売上を紐づけて分析することもできます。

ECサイトの広告は、指名検索に応える「検索型」、新規層に見つけてもらう「発見型」、離脱者を追いかける「呼び戻し型」の3層で考えると整理できます。この記事ではECサイト運営者向けに、広告の種類、見るべき指標、媒体の選び方、少額から始める手順を解説します。

ECサイトの広告の全体像

ECサイトの広告は、ユーザーの購買意欲によって3つの層に分けて考えると整理しやすくなります。指名検索や比較検討まで進んでいる顕在層、まだ商品を知らない潜在層、一度サイトを訪れたものの購入に至らなかった離脱者です。

顕在層には、検索キーワードに連動するリスティング広告やGoogleショッピング広告が向いています。すでに欲しいものが決まっているユーザーに、探しているタイミングで届けるアプローチです。指名検索を持つユーザーは、他の層に比べて購入までの距離が近いという特徴があります。競合が少ないキーワードであれば、クリック単価を抑えやすい傾向もあります。

潜在層には、SNS広告やディスプレイ広告による発見型のアプローチが向いています。まだ商品を知らないユーザーに、興味関心や似た属性をもとに広告を届けます。この層は、指名検索の層に比べて広告への反応が読みにくく、クリエイティブの見せ方による差が出やすい面があります。興味関心データや類似ユーザーの機能を使うと、まだ接点のない新しい顧客層にもリーチを広げられます。

離脱者には、リターゲティング広告やリマーケティング広告で呼び戻します。サイトを訪れた、あるいはカートに商品を入れたのに購入しなかったユーザーに、再度広告を表示する方法です。一度興味を持ったユーザーへの再アプローチのため、新規層向けの広告よりもコンバージョン率が高く出やすい傾向があります。広告の表示回数に上限を設けないと、同じユーザーに広告が表示され続けてしまう点には注意が必要です。

この3層のどこに予算を配分するかが、ECサイトの広告設計の出発点になります。指名検索の量が少ないうちに発見型の広告へ予算を寄せすぎると、認知は広がっても購入につながりにくくなります。逆に、指名検索が十分にあるのに呼び戻しだけに頼っていると、新規顧客の獲得が頭打ちになります。

この3層の考え方は、認知・興味・比較・購入というマーケティングの基本的な流れとも重なります。指名検索層は購入に近い段階、発見型でアプローチする潜在層は認知や興味の段階、呼び戻しは比較の途中で離脱したユーザーへの再アプローチにあたります。事業のフェーズによっても、どの層に重心を置くかは変わります。指名検索がまだ少ない立ち上げ期は発見型への投資が中心になり、指名検索が育ってきた段階では、検索型や呼び戻しの広告で刈り取りを強化する流れになります。Shopifyなどのカートで運営している自社ECサイトでも、他のカートシステムを使っている場合でも、この3層構造の考え方自体は共通しています。次の章では、それぞれの層で使う広告の種類を具体的に見ていきます。

Shopify 公式サイト

※出典:Shopify

ECサイトで使う主要広告の種類

ここでは、ECサイトの集客で使われることが多い広告を種類別にまとめます。同じ広告でも、向いている商材や役割が異なるため、特徴を理解したうえで組み合わせを検討します。

リスティング広告とGoogleショッピング広告は、どちらも検索結果に表示される点は共通していますが、見せ方が異なります。リスティング広告はテキストで訴求し、ショッピング広告は商品画像や価格をそのまま表示します。商品の見た目で違いが伝わりやすい商材は、ショッピング広告のほうがクリックされやすい傾向があります。

広告の種類

特徴

向く商材

リスティング広告

検索キーワードに連動して表示されます。購入意欲が高い顕在層に届き、クリックされた分だけ費用が発生する課金方式です。

指名検索がある商材、比較検討の期間が短い消耗品

Googleショッピング広告・P-Max

商品画像や価格を検索結果に表示します。P-Maxは複数の配信面をまとめて自動配信する広告タイプです。

商品点数が多く、画像で違いが伝わる商材

Meta広告(Instagram・Facebook)

ビジュアルでの訴求に強く、興味関心や類似ユーザーを軸にした配信ができます。

写真や動画で世界観を伝えたい商材

TikTok広告

動画中心で、UGCに近い自然な見え方の広告が受け入れられやすい面があります。

使用シーンを動画で見せやすい商材

LINE広告

国内の利用者が多く、友だち追加後のメッセージ配信と組み合わせやすい広告です。

リピート購入を前提とした商材

ディスプレイ・リターゲティング広告

サイト訪問者やカート離脱者に再度アプローチします。潜在層への認知拡大にも使えます。

検討期間が長い商材、カート離脱が多いサイト

Amazonなどモール内広告

モール内の検索結果や商品ページに表示され、購入直前のユーザーに届きます。

モールにも出品している商材、比較されやすい定番カテゴリ

アフィリエイト広告

成果報酬型で、メディアやブロガーに紹介記事を掲載してもらいます。実際に売れた分だけ報酬を支払う仕組みです。

比較記事との相性がよい商材

自社ECサイトの場合、まず顕在層向けのリスティング広告やショッピング広告から着手し、その後にSNS広告やディスプレイ広告で潜在層に広げていく進め方が多く見られます。表の広告を先ほどの3層に当てはめると、リスティング広告とGoogleショッピング広告・P-Maxは指名検索層、Meta広告やTikTok広告は発見型、ディスプレイ・リターゲティング広告は呼び戻しに対応します。LINE広告やアフィリエイト広告、モール内広告は、これらと組み合わせて使う位置づけになります。全ての種類を同時に始める必要はなく、事業のフェーズに応じて段階的に増やしていく進め方が現実的です。

EC広告で見るべき指標

EC広告の効果測定では、ROAS(広告費用対効果)を中心に見る場面が多くあります。ROASは、広告経由の売上を広告費で割った数値です。ただし、ROASの数値だけを見ていると、粗利を考慮しない判断につながります。

そこで重要になるのが、損益分岐ROASという考え方です。損益分岐ROASは「100÷粗利率」で求められ、商品の粗利率から逆算できます。損益分岐ROASの逆算方法は別記事で詳しく解説しています。

たとえば粗利率が40%(0.4)の商品だと仮定します。この場合、損益分岐ROASは100÷0.4でおよそ250%です。実際のROASがこの数値を下回ると、広告費が粗利を上回り赤字になります。粗利率が高い商材ほど、この基準は低くなり、広告費をかけられる余地が広がります。

ROASに加えて、CPA(顧客獲得単価)とLTV(顧客生涯価値)も合わせて見ておきたい指標です。CPAは、広告費をコンバージョン数で割って求めます。1件の購入や会員登録を獲得するのにかかった費用を示す指標です。

たとえば広告費が10万円で、コンバージョンが20件だったと仮定します。この場合のCPAは10万円÷20件で5000円です。この5000円が、商品の粗利やLTVに対して見合う水準かどうかを、損益分岐ROASとあわせて確認します。

単発購入が中心の商材はCPAとROASを重視します。1回の購入で採算を合わせる必要があるため、損益分岐ROASを下回らないかを都度確認します。リピート購入が見込める商材は、LTVを踏まえて初回購入時点のCPAをどこまで許容するかを判断します。初回の購入だけでは赤字でも、その後のリピートを含めた累計購入額で採算が合えば、広告費を投じる判断ができます。

たとえば、1人の顧客が平均して3回リピート購入し、1回あたりの購入額が5000円だと仮定します。この場合のLTVは5000円×3回で15000円です。粗利率が40%なら、生涯を通じた粗利はおよそ6000円になります。初回のCPAをこの範囲に収まるように設計する、という考え方もできます。

ROASやCPAは、日次では数値がぶれやすくなります。少額運用のうちは、週次で確認する進め方のほうが判断しやすくなります。

媒体選びの考え方

どの広告媒体から始めるかは、次の4つの軸で考えると判断しやすくなります。

  • 商材単価:単価が高いほど、1件あたりにかけられる広告費の上限も上がります。単価が低い商材で単価の高い媒体を使うと、CPAが合いにくくなります

  • 粗利率:粗利率が高いほど、損益分岐ROASのラインは下がります。粗利率が低い商材は、広告費をかけられる余地がそれだけ小さくなります

  • リピート性:リピート購入が見込めるほど、初回のCPAを高めに許容しやすくなります。単発購入が中心の商材は、初回で採算を合わせる必要があります

  • ビジュアル映え:写真や動画で違いが伝わる商材ほど、SNS広告との相性がよくなります。機能や仕様の違いが中心の商材は、検索広告のほうが向いている場合があります

この4軸の組み合わせ方を、仮定を置いたパターンで見てみます。実際の商材にそのまま当てはまるとは限らないため、自社の数値で確認しながら調整することが前提です。

単価が低めで消耗品を扱っており、リピート購入が中心の商材だと仮定します。この場合は、指名検索を取りこぼさないリスティング広告が候補になります。あわせて、購入後の顧客にはLINE広告でアプローチする組み合わせも検討できます。単価が低い分、初回のCPAを抑えつつ、リピートで採算を合わせる設計になります。

単価が高めで、写真や動画で世界観を伝えやすいアパレルやコスメ系の商材だと仮定します。この場合は、Meta広告やTikTok広告で新規層に発見してもらう進め方が候補になります。サイト訪問者には、リターゲティング広告で追いかける組み合わせも考えられます。ビジュアル訴求が効きやすい商材ほど、発見型の広告に予算を寄せる余地があります。

単価が中程度で、他サイトとも比較されやすい家電やガジェット系の商材だと仮定します。この場合は、Googleショッピング広告やP-Maxで比較検討中のユーザーに届ける進め方が候補になります。モールにも出品しているなら、Amazon広告を併用する方法も考えられます。比較検討期間が長い商材は、リターゲティング広告を組み合わせて離脱者を追う設計も選択肢になります。

いずれのパターンも、実際の数値を見ながら配分を調整していくことが前提です。最初から一つの組み合わせに決め切る必要はありません。

また、これらの軸は一度決めたら固定するものではありません。新商品の追加や価格改定があれば、単価や粗利率も変わるため、媒体の組み合わせも定期的に見直す対象になります。ShopifyでD2Cブランドを運営している場合も、他のカートで自社ECを運営している場合も、この4軸に沿って商材を分類すると、媒体の候補を同じように絞り込めます。

広告と売上データをつなぐ

広告の管理画面に表示されるコンバージョン数は、注文が発生した時点の数値です。その後の返品やキャンセルは反映されないため、広告経由の実際の売上とはずれが生じます。EC事業者にとっては、どの広告がどれだけ実売上に貢献しているかが見えにくい状態になります。

このずれを把握するには、広告データとECカートの注文データをつなぐ仕組みが必要です。返品やキャンセルを反映した後の実売上で、広告の成果を見られるようになります。あわせて、どのチャネル経由の注文が返品されやすいかも把握しやすくなります。

媒体ごとのROASを比較する場面でも、返品が多いチャネルほど、管理画面上のROASと実際の利益が乖離しやすくなります。たとえば、あるチャネルの管理画面上のROASが300%で、そのチャネル経由の注文の返品率が20%だったと仮定します。返品分を差し引くと、実質的なROASはおよそ240%(300%×0.8)まで下がります。管理画面のROASだけを見ていると、この差には気づけません。

CascadeはShopifyと連携し、広告データと売上データを紐づけて分析できます。オーガニック検索やSNS、広告など、チャネルごとのセッション数・注文数・コンバージョン率を一覧で比較できるほか、商品・SKU単位の売上や返品率も確認できます。

少額から始める手順

予算が限られている場合は、次の順番で進めると広告費を無駄にしにくくなります。最初から複数の媒体や指標に手を広げるより、範囲を絞ったほうが判断の材料が早く貯まります。

  • まず1媒体に絞って配信します。複数媒体に予算を分散させると、1媒体あたりのデータが貯まりにくくなり、判断に必要な件数が集まるまで時間がかかります

  • 配信を始める前に、コンバージョンの計測設定を整えます。計測が不正確なままだと、後から広告を評価するための判断材料が集まりません

  • クリエイティブは、商品写真とUGCに近い使用シーンの素材を組み合わせて用意します。使用シーンが伝わる素材は、まだ商品を知らない潜在層への訴求に役立ちます

  • 配信の上限予算をあらかじめ決めておきます。数値を見ながら調整する前提でも、想定外に消化が進むリスクを抑えられます

  • 運用中は、週次で見る指標をROAS・CPA・消化金額の3つ程度に絞ります。見る指標が多すぎると、判断が遅くなります

SNS広告から着手する場合は、Instagram広告の始め方を先に確認しておくと、配信設定でつまずきにくくなります。この順番で一つずつ進めることで、少ない予算でも判断材料になるデータを早く貯められます。一定期間配信したら、実際のROASと損益分岐ROASを見比べて、次の1媒体を追加するかどうかを判断します。

少額とはいえ、広告費は立派な事業経費です。フリーランスや個人事業主としてECを運営している場合、経費をどこまで使ってよいかという考え方は、お金と仕事の情報メディア「おかねチップス」の「フリーランスの経費っていくらまで使っていいの?」という解説が参考になります。

お金と仕事の情報メディア「おかねチップス」公式サイト

※出典:おかねチップス

よくある失敗

ECサイトの広告運用では、次のような失敗がよく見られます。

  • 予算を全ての媒体に薄く分散させ、どの媒体でも十分なデータが貯まらない。判断に必要な件数が集まらず、良し悪しの評価ができないまま配信が続きます

  • ROASの数値だけを見て、粗利を考慮せずに広告費を追加してしまう。ROASが高く見えても、粗利率次第では赤字になっている場合があります

  • リターゲティング広告だけに依存し、新規層を増やす広告を止めてしまう。追いかけられる訪問者の母数が増えず、売上の伸びが頭打ちになります

  • コンバージョン計測タグの設定に不備があり、実際の成果とレポートの数値がずれている。数値がずれたまま予算配分を判断すると、成果が出ている広告を止めてしまうこともあります

これらの失敗の多くは、指標や配信先を一つに絞り込めていないことが共通の原因です。まず何を見て判断するかを決めてから、媒体を増やしていくと防ぎやすくなります。

よくある質問

ここでは、ECサイトの広告についてよく聞かれる質問をまとめます。

最初の1媒体はどれを選べばいいですか?

商材の単価や粗利率、リピート性、ビジュアル映えという4つの軸で判断します。指名検索がある商材ならリスティング広告、写真映えする商材ならSNS広告というように、商材の特徴に合わせて選ぶ考え方になります。迷う場合は、まず指名検索の量を確認するところから始めます。

広告予算はいくらから始められますか?

商材やCPAの水準によって幅があるため、金額を一律には決めにくい部分です。目安としては、週次でコンバージョンの傾向が読み取れる件数が貯まる規模から始め、数値を見ながら調整していく進め方になります。最初から大きな予算を投じるより、少額で計測の精度を確認してから広げるほうが、無駄になりにくい進め方です。

モールに出店していても自社EC広告は必要ですか?

モールでの販売と自社ECでの販売は、集まる顧客データの扱いが異なります。自社ECに広告で集客すると、購入者データを自社側で保有でき、リピート施策やLTV分析に使えるようになります。モールでの販売実績だけでは見えない、チャネル別の集客状況も把握しやすくなります。両方のチャネルを併用しながら、それぞれの役割を分けて考える運営者も多く見られます。

リスティング広告とSNS広告、どちらを優先すべきですか?

指名検索の量が一定あるなら、まずリスティング広告で取りこぼしを防ぐ考え方になります。指名検索がまだ少ない、あるいは新規層への認知を広げたい場合は、SNS広告を優先する考え方になります。両方の広告を並行して試しながら、CPAとROASの実績で配分を見直していく進め方もあります。配信量を増やす際は、どちらか一方に偏らせるより、比率を少しずつ調整していくと、急な数値悪化にも気づきやすくなります。

Shopifyと連携できる広告分析ツールはありますか?

Shopifyと連携できる広告ツールはいくつかあり、選ぶ際は広告の成果データとストアの売上データを統合して見られるかがポイントです。広告運用AIエージェント「Cascade」はShopify連携に対応しており、広告のクリックやコンバージョンだけでなく、実際の売上とひもづけて費用対効果を判断できます。BASEやカラーミーショップなど、Shopify以外のECサービスとの連携にも対応しています。

ECサイトの広告運用にはどんなツールが向いていますか?

ECサイトの広告運用では、複数媒体の管理と売上データとの統合分析に対応したツールを選ぶのがおすすめです。Cascadeは、Google・Meta・Amazonなど主要媒体の広告運用をAIが支援し、Shopifyなどのストアデータと合わせて費用対効果を確認できます。ツール選定の際は、利用中のECカートとの連携可否を最初に確認すると失敗しにくくなります。

まとめ

ECサイトの広告について調べ始めたばかりの運営者は、どの種類の広告から手をつければよいかで迷いがちです。広告の種類や指標は数が多く見えますが、まずは3層のどこに課題があるかを把握するところから始めます。ECサイトの広告は、指名検索を取る層、新規層に発見してもらう層、離脱者を呼び戻す層という3層で全体像を整理できます。あとは、商材の特徴に合わせて媒体を選ぶことがポイントです。ROASは損益分岐の考え方とあわせて見て、粗利を踏まえた判断を続けます。予算が限られているうちは1媒体に絞り、計測の精度を確認しながら広げていくと、無駄な広告費を抑えやすくなります。広告データと売上データを一元管理しながら運用したい場合は、Cascadeのようなツールで広告と売上を紐づけて分析することもできます。

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Cascade - ご紹介資料
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