
ABC分析とは
ABC分析とは、商品を売上金額などの大きい順に並べ、累積構成比に応じてA・B・Cに分類し、管理の優先順位を決める分析手法です。ECでは、売上を支える商品を把握し、広告予算・在庫・商品掲載の配分を検討する出発点になります。
重要な商品に管理の力を寄せる考え方で、「重点分析」とも呼ばれます。公的な職業訓練資料でもABC分析(重点分析)という名称が使われています。背景には、一部の要素が全体の成果の大きな部分を占めるという、経験則として広く知られるパレートの法則があります。
商品別の売上順位だけを見る場合と違い、ABC分析では「上位の商品を合わせると、ストア全体の売上のどこまでを占めるか」を確認します。この記事では売上金額による商品分類を基本に、エクセルでの集計から、EC担当者が次に検討する施策までを整理します。
ABC分析のやり方
ABC分析は、期間と指標を決め、売上順に並べ、構成比と累積構成比を計算し、分類の境界を引く流れで進めます。最初に集計条件をそろえると、分類後の比較や見直しの基準が明確になります。
1. 期間と指標を決める
まず分析する開始日・終了日と、売上金額・販売数量・粗利額のどれを使うかを決めます。初回は、同じ期間の商品別売上金額で作成してみましょう。商品単位で見るのか、サイズや色などの販売単位で見るのかもそろえ、途中で集計単位を混ぜないようにします。
値引き・返品・キャンセルをどう扱うか、税込・税抜のどちらで集計するかも記録しておきます。以下は、対象商品の売上がすべて正の値になる場合の手順例です。売上ゼロやマイナスの商品がある場合は、その理由と集計対象を確認してから進めてください。
2. 売上金額の大きい順に並べる
商品名と売上金額を用意し、売上の大きい順に並べ替えます。商品名と金額の対応が崩れないよう、表全体を対象にしてください。同額の商品がある場合は商品コード順などの補助ルールを決めておくと、比較時の並び順をそろえられます。
3. 売上構成比を出す
構成比は「各商品の売上金額÷対象商品の売上合計」です。商品ごとに、全体の売上に占める割合を求めます。Excelでは計算結果をパーセント表示にすれば、割合を読み取れます。
4. 累積構成比を出す
累積構成比は、売上順に並べた先頭からその商品までの売上を合計し、売上合計で割った値です。「その商品単独の割合」と「上位から足した割合」を分けて確認しましょう。対象商品の集計がそろっていれば、最後の行は100%になります。
5. A・B・Cの境界を引く
累積構成比の70%と90%を境界の目安にして分類します。境界をまたぐ商品をどちらへ入れるかは、集計表のルールとして明記してください。次のExcel例では、商品を加える前の累積が70%未満ならA、70%以上90%未満ならB、90%以上ならCとします。
ExcelでABC分析を作る手順と数式
A列を商品名、B列を売上金額、C列を構成比、D列を累積構成比、E列をABC分類とし、見出しを先頭行、商品データを2〜11行に置く例です。実際の商品数に合わせて、式の最終行を変更してください。
操作 | 入力・設定する内容 | 確認すること |
|---|---|---|
売上順に並べる | 表全体を選び、B列の数値を降順に並べ替える | 商品名と売上金額の対応を保つ |
構成比を求める | C2に =B2/SUM($B$2:$B$11) | C11までコピーし、パーセント表示にする |
累積構成比を求める | D2に =SUM($B$2:B2)/SUM($B$2:$B$11) | D11までコピーし、パーセント表示にする |
ABCを判定する | E2に A、E3に =IF(D2<70%,"A",IF(D2<90%,"B","C")) | E3の式をE11までコピーする |
結果を確認する | 最終行の累積構成比と各グループの商品を確認する | 境界をまたぐ商品は、加算前に属するグループへ入る |
並べ替えはMicrosoftの範囲・テーブルの並べ替え、合計はSUM関数、範囲の始点を固定して足す方法は累計の計算、条件判定はIF関数の公式サポートで確認できます。表の式は、これらを本記事の集計ルールに合わせて組み合わせたものです。
この例では、最上位の商品だけで70%を超えても、その商品はAになります。その分だけグループの売上割合が目安からずれるため、判定結果と実際の構成比をセットで確認してください。表示を丸めた割合を手入力せず、計算値をそのまま判定に使いましょう。
ABC分析の割合の目安
ABC分析の割合は、Aが売上の上位約70%、Bが次の約20%、Cが残り約10%という区分が一般的な目安です。これは商品数の配分ではなく、選んだ指標の合計に対する構成比を表します。
分類 | グループの構成比の目安 | 累積構成比の目安 | 売上から見た位置づけ |
|---|---|---|---|
A | 上位約70% | 先頭から約70%まで | 売上の中心となる主力商品 |
B | 次の約20% | 約70〜90% | 主力に続く中堅商品 |
C | 残り約10% | 約90〜100% | 売上構成比が小さい商品 |
岡山理科大学のABC分析の説明でも、売上高・利益・販売個数などで並べ、累積比率を使って分類する考え方が示されています。目安に合わせること自体を目的にせず、主力商品の集中度や、自社で重点管理できる商品数を踏まえて境界を調整しましょう。
数量ベースと金額ベースでは、商品単価の違いによって順位が変わります。販売個数が少なくても単価が高い商品と、単価は低くても販売個数が多い商品を、同じ順位と考えることはできません。売上への貢献を見たいときは金額、出荷や補充の対象を検討するときは数量も確認する、という使い分けが実務的です。
ECサイトでのABC分析の活用
ECでABC分析を使うときは、分類をもとに広告・在庫・掲載の見直し候補を選び、粗利や販売状況を確認して施策を決めましょう。以下は商品分類を実務につなげる運用の考え方で、A・B・Cの売上構成比をそのまま広告予算の割合にするものではありません。
広告予算は、商品分類に粗利と広告成果を重ねて決める
ABC分類別に「広告予算は何%」といった推奨比率が公表されているわけではありません。A商品の広告を増やす前に、その商品で残る粗利、広告経由の売上、ROAS、CPAを確認します。売上の順位に加えて、コンバージョンの価値(広告経由で得られた売上や利益)を判断材料にします。
実務では、商品ごとのABC分類の横に、粗利額・広告費・広告経由売上・獲得件数・在庫の欄を並べておくと判断しやすくなります。ROAS・CPA計算ツールも参照しながら、同じ集計条件で数値を確認してください。ストア全体の商品売上を、そのまま広告経由の売上として扱わないようにします。
商品の状態 | 広告配分で検討すること | 実施前に確認すること |
|---|---|---|
Aで粗利と広告成果が目標を満たす | 追加予算の候補にする | 在庫と供給の余力、増額後のROAS・CPA |
Aで粗利や広告成果に課題がある | 商品ページ・価格・訴求の見直しを先に検討する | どの条件が目標を下回っているか |
Bで販売を広げたい | 予算上限を決めて広告や掲載を検証する | 検証後の粗利、広告成果、分類の変化 |
Cで役割が不明確 | 単品広告を見直し、関連商品の提案も検討する | 販売期間、併売実績、在庫の状況 |
増額する候補が決まったら、変更内容と見直す時期を記録します。増額後も同じ成果が続くと見込まず、実績を確認して次の判断を行いましょう。Amazon広告などを利用している場合も、商品分類と出稿先の実績を照らし合わせて検討してください。
在庫と欠品防止を広告の判断に組み込む
A商品は、在庫数・補充予定・販売ペースを優先して確認する対象にします。広告を増やす候補でも、次の入荷まで供給できるかを先に確認してください。仕入れ担当と広告担当で、増額予定と入荷予定を共有しておくと、欠品と広告増額のずれを防げます。
品切れが続いた商品の順位を見るときは、販売できなかった期間も添えて判断しましょう。閲覧から購入までの流れを確認する際は、カゴ落ち対策も参照し、購入手続き側に見直す点がないかを調べます。
C商品の整理は、掲載とセット購入を含めて検討する
Cに入った商品は、仕入れの継続、掲載場所、単品広告、関連商品の提案を点検する候補にします。低売上という理由だけで取扱終了を決めず、発売時期や他商品との組み合わせ、粗利を確認してください。
中小機構のPOSデータ活用の解説では、売上に利益の視点を加え、セットメニュー化も含めて対策を検討する考え方が示されています。ECでは、実際に一緒に購入されている組み合わせを確認し、関連商品欄やセット販売の候補にする方法が考えられます。
掲載を見直す場合は、トップページや特集ページでどの商品を優先するかも検討します。Aを目立つ場所へ置き、Bの掲載を試し、Cは関連商品欄から提案するなど、商品の役割に応じた変更案を作りましょう。変更後は単品の売上だけでなく、組み合わせ全体の粗利も確認してください。
ABC分析の注意点
ABC分析を施策に使う前に、新商品・季節商品・粗利・集計期間を確認しましょう。選んだ期間と指標による分類なので、ランクだけで商品の将来性や広告の採算まで判断しないことが大切です。
新商品と季節商品を同じ条件で評価しない
新商品には発売日を、季節商品には販売を強化する時期を添えて管理します。販売期間の短い商品をCという理由だけで整理せず、評価を見直す時期を決めておきましょう。季節商品は販売シーズンの実績も確認し、年間の順位と分けて検討してください。
粗利で見ると順位が変わる
中小機構の決算書の説明にあるとおり、粗利は売上高から売上原価を差し引いた利益です。売上の大きさと粗利率は別なので、売上金額で上位の商品が粗利額でも上位になるとは限りません。
粗利の意味と計算式を確認し、売上ABCと粗利額によるABCを並べてみましょう。粗利率の高さだけで順位を付けるのではなく、期間内の粗利額で貢献を見るのが、この比較の狙いです。商品の採算を確認する際は、利益率・粗利率の計算ツールも参照できます。
期間の取り方と集計条件を記録する
通常期とセール期を分けた集計や、前年の同じ時期との比較を検討してください。前回とランクを比べるときは、期間の長さ、返品の扱い、対象商品の範囲も確認します。値下げ・掲載変更・広告変更の記録を残しておくと、分類が変わった理由を後から追えます。
パレート図との違い、RFM分析・デシル分析との使い分け
ABC分析は商品などを分類して優先順位を考える手法、パレート図は数値と累積割合を可視化する図です。顧客への対応を考えたい場合は、RFM分析やデシル分析を使い分けます。
手法 | 見る内容 | 使う場面 |
|---|---|---|
商品ABC分析 | 商品別の売上などの構成比と累積構成比 | 商品管理や販促の優先順位を検討する |
パレート図 | 降順の棒グラフと累積割合の折れ線 | 上位の商品などに数値がどれだけ集中するかを見る |
RFM分析 | 最新購入日・購入頻度・購入金額 | 顧客の購買状況に応じた対応を考える |
デシル分析 | 購入金額などの順に顧客を10等分し、各群の売上構成比を見る | 売上がどの顧客層に集中しているかを確認する |
Microsoftのパレート図の説明でも、降順の棒と累積割合の線を組み合わせる形式が示されています。ABCの分類表にパレート図を添えれば、境界と売上の集中度を一緒に確認できます。
RFMとデシルの定義は、中小機構の顧客リストを使った分析手法の説明で確認できます。「どの商品に注力するか」から「どの顧客との関係を深めるか」へ検討を広げるときは、LTVとCACの考え方もあわせて参照してください。
Cascadeで商品ABC分析を行う
Cascadeの商品ABC分析では、売上構成比に応じて商品をA・B・Cに分類でき、在庫や広告予算を寄せる商品、整理すべき商品を判断する材料が得られます。EC分析はBusinessプランの機能です。
分類の目安はAが上位約70%、Bが約20%、Cが約10%です。構成比の閾値は、ストア全体の売上に対する累積比率で自動計算されます。
期間を選び、その期間の売上をもとに分類を確認します。
グループサマリーで、A・B・Cごとの商品数・合計売上・構成比を確認します。
商品テーブルで、商品名・売上金額・売上数・構成比・累積構成比・ABCを確認します。各列は並べ替えられます。
グループで絞り込み、対象商品の詳細を確認します。
操作は商品ABC分析のヘルプで確認できます。商品ABC分析の対応ストアは、Shopify・Shopline・カラーミーショップ・BASE・楽天市場・Yahoo!ショッピング・Qoo10・Amazon・TikTok Shopです。EC分析の売上ソースにはStripeも含まれますが、商品ABC分析の対応ストア一覧には含まれていません。
同じEC分析には、売上トレンド、商品別の売れ筋ランキング、顧客分析(LTV)、セット購入ランキング、在庫数、返品・返金分析、流入チャネル分析があります。セット購入ランキングでは一緒に購入される組み合わせ、在庫数では在庫残日数や在庫切れアラートを確認できます。全体像はEC分析とはで確認でき、広告成果と組み合わせて改善ポイントを見つけるための情報が得られます。
商品以外の売上・顧客・在庫の分析はECサイト分析の指標・手順・ツールで全体像をまとめています。
よくある質問
割合の意味、表計算での手順、可視化との違いについて、よくある質問をまとめました。
Q. ABC分析の割合はどう決めますか?
A. 売上構成比でAを上位約70%、Bを次の約20%、Cを残り約10%とするのが一般的な目安です。商品数の割合ではありません。商品の分布と重点管理できる範囲に合わせて境界を調整します。
Q. ABC分析はエクセルでできますか?
A. できます。商品別売上を降順に並べ、SUM関数で合計や累計を求め、IF関数で分類します。本記事の表には、入力するセルと式、境界商品の扱いを示しています。
Q. ABC分析とパレート図の違いは何ですか?
A. ABC分析は構成比から分類する手法で、パレート図は降順の棒グラフと累積割合の折れ線で表す図です。図を作らなくてもABC分類はできます。
Q. 飲食店でもABC分析は使えますか?
A. メニュー別の売上や利益を比較する際にも使えます。原価を確認したうえで、売上と利益の両面からメニューの見直しやセット提供を検討してください。
Q. A商品の広告予算を70%にすればよいですか?
A. 70%は商品を分類する際の売上構成比の目安です。広告予算は、各商品の粗利、広告成果、在庫を確認して決めましょう。
まとめ
ABC分析は、商品の売上構成比と累積構成比から、管理の優先順位を考える手法です。ECでは、分類に粗利・広告成果・在庫を重ね、広告予算と商品掲載を見直す候補を選びましょう。
まず期間と指標をそろえた表を作り、境界のルールを記録し、施策を実施した後の結果まで確認してください。Cascadeの商品ABC分析でも、在庫や広告予算を寄せる商品を判断する材料が得られます。








