
在庫回転率とは、一定期間に在庫が何回入れ替わったかを示す指標です。
在庫回転率=期間中の売上原価÷同じ期間の平均在庫金額
在庫回転率とは
在庫回転率は、保有する在庫に対してどれだけ販売が進んだかを「回」で表します。「率」という名前ですが、通常はパーセントで表す指標ではありません。中小企業庁「中小PMIガイドライン」(宮崎県公開版、84ページ)にも、在庫の入れ替わりを示す指標として説明があります。
小売では、商品の在庫の回転を「商品回転率」と呼ぶこともあります。ただし、名称だけでは計算方法を判断できません。売上高を使うか売上原価を使うか、金額で見るか数量で見るかを確認してください。
現在の在庫数だけでは、販売の速さに対して在庫が多いか少ないかは分かりません。販売実績と在庫を組み合わせると、補充や仕入を見直す手がかりになります。店舗全体の値に加え、商品ごとの動きを見ることが大切です。
在庫回転率の計算式
在庫回転率は、金額なら売上原価、数量なら出庫数量を平均在庫で割って求めます。分子と分母で、対象の商品と集計期間をそろえましょう。
計算方法 | 計算式 | 主な用途 |
|---|---|---|
金額ベース | 期間中の売上原価÷平均在庫金額 | 資金が在庫にどれだけ留まっているかを見る |
数量ベース | 期間中の出庫数量÷平均在庫数量 | 同じ商品の動きを個数などで見る |
金額ベースでは、売れた商品に対応する原価と、原価で評価した在庫を使います。販売価格を合計した在庫金額と混ぜないでください。会計教材OpenStaxの在庫回転率の式も、売上原価を平均在庫で割る形です。
数量ベースは、色やサイズなどを含め、同じ商品単位で計算すると判断しやすくなります。売れ行きを見る目的なら、出庫数量は販売による出荷として集計しましょう。倉庫間の移動や廃棄を混ぜると、販売が進んだように見えてしまいます。
平均在庫の求め方
簡便な求め方は、期首と期末の在庫を足して、2で割る方法です。
平均在庫金額=(期首在庫金額+期末在庫金額)÷2
平均在庫数量=(期首在庫数量+期末在庫数量)÷2
期首と期末は、選んだ集計期間の始めと終わりを指します。数量による回転率と平均在庫数の式は、BSLシステム研究所の公式ヘルプでも確認できます。
期中に大きな仕入やセールがあると、両端の在庫だけでは実態を捉えにくくなります。記録があれば、毎日など等間隔の在庫残高の平均を使う方法も検討してください。途中で平均の取り方を変えた場合は、過去の数値も同じ方法で計算し直しましょう。
金額ベースの計算例
以下は仮定の数値です。ある商品の年間売上原価を900万円、期首在庫を240万円、期末在庫を360万円とします。在庫金額はいずれも原価で評価したものです。
平均在庫金額=(240万円+360万円)÷2=300万円
年間在庫回転率=900万円÷300万円=3回
平均して保有していた在庫の3回分に相当する原価の商品を、年間に販売した計算です。個々の商品がすべて同じ日数で売れたという意味ではありません。
数量ベースの計算例
こちらも仮定の数値です。同じ商品について、30日間の販売による出庫を450個とします。期首在庫が120個、期末在庫が180個の場合、次のようになります。
平均在庫数量=(120個+180個)÷2=150個
30日間の在庫回転率=450個÷150個=3回
同じ3回でも、先ほどは年間、こちらは30日間の値です。管理表には回転率と集計期間をセットで記録してください。平均在庫がゼロなら割り算ができないため、ゼロ回として扱わず、記録と平均の取り方を確認しましょう。
在庫回転日数(在庫回転期間)との違い
在庫回転率は入れ替わった回数、在庫回転日数は入れ替わるまでの日数を表します。在庫回転期間は、日や月などの単位で表した期間です。同じ対象と集計期間なら、回転率が高くなるほど回転日数は短くなります。
在庫回転日数=集計期間の日数÷その期間の在庫回転率
金額で書き直すと「平均在庫金額÷期間中の売上原価×集計期間の日数」です。会計専門職団体ACCAの教材にも、在庫を売上原価で割り、365を掛ける式が示されています。
先ほどの仮定の数値を使い、年間を365日とすると、年3回の回転日数は365÷3=約121.7日です。おおよそ122日分の平均在庫を持っていたと読めます。一方、30日間で3回なら30÷3=10日です。
平均在庫があっても、売上原価や出庫数量がゼロなら回転率はゼロです。この場合は回転日数を通常の割り算で出せないため、販売のない商品として分けて確認しましょう。
これは過去の実績から見た平均です。いまの在庫が何日もつかを示す「在庫残日数」とは区別してください。補充の判断では、現在の在庫と直近の販売ペースも確認する必要があります。
在庫回転率の目安
在庫回転率の目安は、自社の過去の値と商品カテゴリ別の値を軸に決めましょう。業種の名前が同じでも、商品の保存期間や補充にかかる日数は異なります。平均値をそのまま発注の目標にするのは避けたいところです。
公的統計にも、算出方法の違いがあります。財務省「法人企業統計調査」の2024年度の数値として、次の回転期間が公表されています。いずれも全規模の集計で、ECや小売だけの値ではありません。
業種区分 | 棚卸資産回転期間 |
|---|---|
全産業 | 1.12月 |
製造業 | 1.64月 |
非製造業 | 0.92月 |
出典は、財務省「法人企業統計からみえる企業の財務指標:棚卸資産回転期間」です。算出方法は「棚卸資産の期首・期末平均÷(年間売上高÷12)」です。売上高ベースの月数なので、本記事の売上原価ベースの回転率とは直接比較できません。
自社で比較するときは、まず商品カテゴリと期間をそろえます。季節性がある商品は前年の同じ時期とも比較しましょう。そのうえで欠品した日、仕入を増やした時期、セールの有無を重ねて確認してください。回転率が変わった理由が見えてから、目標を決める順序がおすすめです。
高ければよいとは限らない
在庫回転率は、高さだけで良否を判断できません。在庫を減らしすぎれば欠品による販売機会の損失が生じ、持ちすぎれば保管コストが重くなります。J-Net21「小売業の仕入ポイント」も、大量仕入の保管費用と、品切れの機会ロスに触れています。
回転率が上がったときは、販売が伸びたのか、平均在庫だけが減ったのかを分けて見ましょう。注文できない日が増えているなら、回転率の上昇を喜ぶ前に補充方法の確認が必要です。
一方、売れ残りを値下げして販売すれば、在庫が動いても粗利が減る場合があります。粗利は売上高から売上原価を引いた金額です。粗利の計算方法を押さえ、回転率と粗利額を並べて判断してください。
値下げを検討するときは、変更後の売価で利益がどれだけ残るかを先に確かめましょう。利益率計算ツールを使うと、売価と原価から粗利率を確認できます。さらに広告費や販売手数料なども見て、販売条件を決めることが大切です。
在庫回転率を改善する方法
改善の出発点は、商品別に原因を調べ、発注と販売の両方を見直すことです。一律に仕入を減らすと、必要な在庫まで不足しかねません。次の手順で、動きの違う商品を分けて考えましょう。
商品別に分けて確認する
商品ごとに、回転率、在庫数、売上、粗利、欠品の記録を並べます。全体の平均だけでは、売れ筋の不足と売れ残りの多さが同時に起きていても分かりにくいからです。
確認する順番を決めるには、ABC分析も役立ちます。売上額や粗利額など、目的に合った基準で商品を整理してください。順位が低いだけで仕入を止めず、季節商品や新商品の事情も確認しましょう。
発注点と発注量を見直す
発注点は追加発注のタイミングを決める在庫水準、発注量はそのときに頼む数量です。納品までに売れる量と、需要の増加や納品の遅れに備える在庫を考えて決めます。J-Net21の在庫管理の解説も、納品までの期間と安全在庫を考慮するよう示しています。
売れ筋は、在庫が残っていても次の入荷前に切れないかを確認しましょう。動きの遅い商品は、最低発注数量や発注間隔の見直しを仕入先と相談します。広告やセールで販売を増やす予定があれば、発注担当にも事前に共有してください。
滞留在庫の理由に応じて対応する
滞留在庫は、最終販売日や入荷時期を確認し、売れていない理由を探ります。商品説明が足りないのか、価格が合っていないのか、需要の時期を外しているのかを切り分けましょう。
原因に応じて、商品ページの修正、見せ方の変更、セット販売、値下げなどを検討します。追加仕入を止める判断も必要です。対応後は、回転率に加えて粗利と欠品の変化を確認し、次の発注へ反映してください。
在庫と広告をあわせて見る
在庫と広告は、商品の販売可能な数量と入荷予定をもとに調整しましょう。在庫切れで購入できない商品は、広告で集客してもその時点の売上につながりません。
Amazonのスポンサープロダクト広告は、在庫切れの商品では表示されません。Amazon Ads公式FAQには、次の説明があります。「商品がおすすめ出品ではない、または在庫切れの場合、広告は表示されません」(筆者訳)。
在庫があれば広告が表示される、というわけでもありません。おすすめ出品に関わるBuy Boxの仕組みも確認してください。広告の種類や運用の前提は、Amazon広告の解説にまとめています。
実務では、売り切れてから対応するだけでなく、入荷前の欠品を避ける調整が重要です。在庫残日数が短い商品は、次の入荷までの間、広告を抑える判断を検討しましょう。回転の遅い商品は、在庫量と粗利を確認したうえで、訴求や広告対象の見直しを考えます。
売れない理由が商品情報や価格にある場合、広告を増やすだけでは解決しません。広告を調整した日と入荷した日を記録しておくと、販売の変化を振り返りやすくなります。EC分析の指標も参考に、在庫、売上、粗利を商品ごとに追いましょう。
Cascadeでできること
Cascadeでは、商品ごとの在庫残日数を確認し、Amazonの在庫連動ガードを設定できます。EC分析はBusinessプランの機能です。ここで確認する在庫残日数は、過去の回転率とは役割が異なります。
[EC]>[商品分析]の「在庫数」カードには、在庫数と平均日次販売数から算出した在庫残日数が表示されます。平均日次販売数は、選択した期間の販売実績をもとに計算されます。表は既定で在庫残日数の短い順に並ぶため、上から補充発注の優先度を検討できます。
Amazonでは、カード見出しの「広告ガード設定」から在庫連動ガードを設定できます。在庫切れが近い商品の広告を自動停止・再開する機能です。Buy Box獲得率の低下を知らせるアラートも設定できます。
商品分析には「商品ABC分析」があり、商品管理では商品ごとの粗利率を設定できます。粗利率から広告の目標ROAS、目標CPA、目標ACoSを自動で計算する広告自動最適化の機能もあります。在庫の確認と、粗利を踏まえた広告目標の設定に活用できます。
よくある質問
計算や判断で迷いやすい点は、集計期間、原価と売価の区別、欠品との関係です。数値だけで結論を出さず、次の前提を確認してください。
Q. 在庫回転率の計算式は?
金額ベースでは「期間中の売上原価÷平均在庫金額」です。数量ベースでは「期間中の出庫数量÷平均在庫数量」を使います。平均在庫は期首と期末の平均などで求め、対象の商品と期間をそろえます。
Q. 在庫回転率は高ければ高い方がいいですか?
高ければよいとは限りません。在庫を絞って欠品が増えたり、値下げによって粗利が減ったりしていないかを確認しましょう。回転率とあわせて、販売機会と利益が保てているかを見ることが大切です。
Q. 在庫回転率3とはどういう意味ですか?
対象期間に、平均在庫の3回分に相当する販売や出庫があったという意味です。本記事の仮定の数値では、年間で3回なら回転日数は約121.7日、30日間で3回なら10日です。まず集計期間を確かめてください。
Q. 在庫回転率の目安は何回ですか?
すべての商品に共通する回数は決められません。同じ計算方法で、自社の過去や商品カテゴリ別の値を比べましょう。公的統計を参照するときも、調査年度と業種区分に加え、売上高と売上原価のどちらを使うかを確認します。
Q. 在庫回転日数と在庫残日数は同じですか?
同じではありません。在庫回転日数は、過去の平均在庫と販売実績の関係を見る指標です。在庫残日数は、現在の在庫が販売ペースに対して何日分あるかを見ます。回転の改善には前者、直近の補充や広告調整には後者を役立てましょう。
まとめ
在庫回転率は、在庫の持ち方と販売の進み方を点検するための指標です。金額・数量・集計期間をそろえて計算し、回転日数に換算すると在庫の状態を説明しやすくなります。
まずは商品別に、過去の回転率、粗利、欠品の記録を並べてみてください。発注を見直したうえで、現在の在庫残日数と入荷予定に応じて広告を調整しましょう。在庫の量と販売施策を一緒に判断することが、日々の運用の土台になります。







