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医療広告ガイドラインとは|広告運用者が押さえる禁止事項と限定解除

医療広告ガイドラインとは|広告運用者が押さえる禁止事項と限定解除

医療広告ガイドラインとは、医療法第6条の5などの規定を受けて厚生労働省が定めている「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」の通称で、ウェブサイトやSNS、リスティング広告、バナー広告を含む医療機関の広告表現を規制するものです。禁止される表現に該当すれば、行政指導から命令、罰則までの対応につながる可能性があります。

医療広告ガイドラインを解説する記事の多くはクリニックの経営者・院長向けに書かれていますが、実際に広告文やLPの表現をつくり、媒体の入稿・審査に対応するのは広告運用者やマーケターです。本記事では規制の全体像に加えて、限定解除がバナー広告・リスティング広告では成立しにくいという実務上の落とし穴や、Google・Meta・LINEヤフーといった媒体側の広告ポリシーとの二層構造など、運用の現場で判断に迷いやすいポイントを厚生労働省の一次資料に基づいて整理します。

医療広告ガイドラインとは何か

医療広告ガイドラインは、医療法(昭和23年法律第205号)第6条の5などの規定に基づき、医業・歯科医業又は病院・診療所に関する広告のルールを具体化した厚生労働省の指針です。直近では令和8年3月30日に最終改正されており、オンライン診療を受ける施設(オンライン診療受診施設)に関する広告規制を新設した令和7年法律第87号による医療法改正を反映しています。本記事で扱う医業・歯科医業に関する広告規制の骨格自体は、この改正で大きく変わっていません。

医療広告が他分野の広告より厳しく規制されている理由として、厚生労働省は、医療が人の生命・身体に関わるサービスであり不適切な広告による被害が他分野より大きいこと、広告の受け手が広告の文言だけから医療サービスの質を事前に判断することが非常に困難であることの2点を挙げています。

広告に該当する3つの要件

ガイドラインは、次の①〜③をすべて満たす場合に医療法上の「広告」に該当するとしています。

  • ① 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)

  • ② 医業・歯科医業を提供する者の氏名・名称、または病院・診療所の名称が特定可能であること(特定性)

  • ③ 医業・歯科医業又は病院・診療所に関する内容であること

新聞記事のように特定の病院を推薦する内容でも、①の誘引性を欠くとして通常は広告に該当しないとされる一方、同じ内容を医療機関が自らのウェブサイトに掲載する体験談は誘引性ありとして広告に該当し、後述する体験談の禁止規定の対象になるとされています。「これは広告ではありません」といった注記や、記事風広告・タイアップ記事の形式をとっていても、実質的に3要件を満たせば広告として取り扱われる点にも注意が必要です。

規制の対象者と対象媒体(広告代理店・アフィリエイターも対象)

ガイドラインは、規制の対象者を医師・歯科医師や医療機関に限定していません。法第6条の5第1項は「何人も」という主語で規制対象を定めており、厚生労働省はマスコミ、広告代理店、アフィリエイター、患者、一般人など、何人も広告規制の対象になるとしています。広告依頼者から依頼を受けて広告を企画・制作する広告代理店や、広告を掲載する媒体、アフィリエイターについても、内容が虚偽・誇大等になっていないか留意する必要があり、違反があれば広告依頼者とともに指導等の対象になり得るとされています。

対象となる媒体も紙媒体だけではありません。チラシやポスター、看板に加えて、「情報処理の用に供する機器によるもの」としてEメールやインターネット上の広告が明記されており、運用型広告やSNS広告もこの範囲に含まれます。

ウェブサイトが規制対象に含まれた経緯

ウェブサイトは、以前は医療法上の広告として原則規制対象とされておらず、平成24年9月28日付の「医療機関ホームページガイドライン」により業界団体等の自主的な取組に委ねられていました。しかし美容医療に関する相談件数の増加を受け、消費者委員会が2015年7月7日に法的規制の必要性を建議したことを踏まえ、平成29年の通常国会で成立した医療法等の一部を改正する法律(平成29年法律第57号)により、ウェブサイト等も他の広告媒体と同様に規制対象となりました。同じ改正で、患者等が自ら求めて詳しい情報を得られるよう「広告可能事項の限定解除」の制度も設けられています。

医療法・薬機法・景品表示法の関係

医療広告ガイドラインが規制する「医療広告」は、医業・歯科医業又は病院・診療所そのものに関する広告に限られます。同じ医療機関の広告でも、扱う医薬品・医療機器・化粧品の効能効果に関する表現は薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の規制対象になり、誇大な効果効能や不当な価格表示は景品表示法の規制対象にもなり得ます。ガイドライン自体も、医薬品医療機器等法・健康増進法・景品表示法・不正競争防止法に触れながら、他法令に抵触する広告は行うべきではないと明記しています。

具体例として、ガイドラインは「当院ではジェネリック医薬品を採用しております」「AGA治療薬を取り扱っております」のように医薬品名を特定しない表現は広告可能とする一方、「医薬品『○○錠』を処方できます」のように商品名を挙げる表現は薬機法の広告規制の趣旨に照らして広告できないとしています。医薬品・化粧品等の効能効果表現そのものを詳しく確認する際は薬機法の広告表現に関する解説記事を、価格表示や体験談・No.1表示などクリエイティブ全般の景品表示法上の注意点は景品表示法のNG表現チェックリストもあわせて確認してください。「医療『機関』の広告=医療法」「医薬品・化粧品等の広告=薬機法」という区別を押さえておくと、どの規制を確認すべきか判断しやすくなります。

医療広告で禁止される表現【禁止事項一覧】

厚生労働省のガイドラインは、医療広告で禁止される表現を大きく8つの類型に整理しています。

類型

内容

根拠

虚偽広告

広告内容が事実と異なるもの。「絶対安全な手術です」等の断定表現や、加工・修正した術前術後写真を含む

法第6条の5第1項

比較優良広告

他の医療機関と比較して優良である旨の広告。「日本一」「県内一の医師数」等の最上級表現や著名人との関連性の強調を含む

法第6条の5第2項第1号

誇大広告

必ずしも虚偽ではないが、事実を不当に誇張し人を誤認させる広告。「〇〇センター」の名称、実態のない学会・協会の認定表示等

法第6条の5第2項第2号

公序良俗に反する広告

わいせつ・残虐な図画や映像、差別を助長する表現を用いた広告

法第6条の5第2項第3号

広告可能事項以外の広告

法・広告告示で認められた事項以外の広告(死亡率・術後生存率、未承認医薬品による治療内容等)

法第6条の5第3項

患者等の体験談

患者本人や家族の伝聞に基づく、治療の内容・効果に関する主観的な体験談

省令第1条の9第1号

ビフォーアフター写真等

治療内容・費用・主なリスクの説明を伴わない、患者を誤認させるおそれのある術前術後の写真等

省令第1条の9第2号

その他(品位を損ねる広告等)

費用を過度に強調した広告(「今なら〇円」等)、ふざけた表現、他法令で禁止される内容の広告

ガイドライン第3-1(8)

このうち、費用を強調した広告は見落とされがちです。ガイドラインは「今なら〇円でキャンペーン実施中」「期間限定で〇〇療法を50%オフで提供」「〇〇治療し放題プラン」といった表現を、品位を損ねる広告の具体例として挙げています。セールやキャンペーンを前提としたクリエイティブの型は、一般消費財の広告では定番でも、医療広告ではそのまま使えない可能性がある点に注意してください。

なお、医療機関が費用を負担してインフルエンサーや第三者に投稿を依頼した体験談・口コミは、誘引性が認められれば医療広告としての体験談規制の対象になります。表示であることが分かりにくい場合はステルスマーケティング規制(景品表示法)の対象にもなり得るため、体験談・口コミ活用の実務ポイントはステマ規制の解説記事もあわせて確認してください。

広告可能事項の限定解除とは(4つの要件)

医療広告は、原則として法や広告告示で列挙された事項以外を広告できません。ただし、患者等が自ら求めて詳しい情報にアクセスする場合まで一律に制限すると適切な情報提供が妨げられるため、次の①〜④をすべて満たせば、広告可能事項の限定を解除し、通常は広告できない診療内容や費用なども広告できるとされています(自由診療については③④も必須の要件です)。

  • ① 医療に関する適切な選択に資する情報であって、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること

  • ② 表示する情報について、患者等が容易に照会できるよう問い合わせ先を明示すること

  • ③ 自由診療に通常必要とされる治療内容・費用等の情報を提供すること

  • ④ 自由診療に伴う主なリスク・副作用等の情報を提供すること

未承認医薬品等を自由診療で用いる場合は、③④に加えて、未承認であることの明示、個人輸入の場合の入手経路の明示、国内承認医薬品の有無、海外での安全性情報、医薬品副作用被害救済制度の対象外である旨の明示という5点の追加記載が要件になります。

バナー広告・リスティング広告は限定解除の対象になりにくい

広告運用の実務で特に注意が必要なのが、①の要件です。ガイドラインは、インターネット上のバナー広告や、検索連動型のリスティング広告でスポンサーとして表示されるものについて、「患者等が自ら求めて入手する情報」には当たらないため①の要件を満たさないと明記しています。厚生労働省の事例解説書(第6版)も、バナー広告・リスティング広告の広告文そのものに比較優良表現(「業界最安値」等)や費用の強調を含めると、遷移先のLPに治療内容・費用・リスクを詳しく記載していても違反になり得ると説明しています。バナー広告やリスティング広告自体が一律禁止されているわけではありませんが、広告文の中身は限定解除に頼らず、法・広告告示で認められた事項の範囲に収める必要があります。

SNS広告は情報の分散に注意する

SNS広告についても、厚生労働省の事例解説書は、1つの投稿は単独で1つの広告として扱われるとした上で、限定解除の対象にする場合はプロフィール欄・投稿本文・返信(リプライ)の組み合わせや固定投稿への導線などにより、治療内容・費用と主なリスク・副作用の情報が一体的かつ一覧性を持って提供されている必要があるとしています。必要な情報が複数のSNSアカウントに分散していて、いずれか一つのSNSだけでは確認できない構成は、分かりにくい情報提供として避けるべき例に挙げられています。

媒体の広告ポリシーという「もう一つの審査」

医療法や薬機法をクリアしていても、広告を配信する媒体側の独自ポリシーで別の審査が必要になる場合があります。医療広告ガイドラインの遵守と媒体ポリシーの遵守は別のレイヤーであり、両方を満たして初めて出稿できると考えておくのが安全です。

Google広告は「ヘルスケア、医薬品」ポリシーで、処方薬に関するサービスや医薬品メーカー、依存症関連サービスなど複数のカテゴリについて、Googleの認定を受けることを求めています。対象・要件は国や地域によって異なるため、該当しそうな場合はGoogle広告ポリシーヘルプで最新の要件を確認してください。また「健康(パーソナライズド広告の場合)」ポリシーでは、疾病や性に関する健康、長期的な治療・管理が必要な慢性的な健康障害など、デリケートな健康情報を基準にしたカスタマーマッチや類似セグメントなどのオーディエンス設定が制限されています。

Metaは広告基準の「Health and Wellness」で、身体的な特徴を劣っているかのように示す表現や、がん・HIV等の不治・終末期疾患を治療・完治できるとうたう広告を制限しています。加えて「Personal Attributes(個人の属性)」ポリシーでは、閲覧者本人やその家族の健康状態を広告主が知っているかのように示す表現を禁止しており、公式ヘルプは「Do you have diabetes?(糖尿病ですか?)」のような表現をNG例、「New diabetes treatment available(新しい糖尿病治療が利用可能)」のように症状を断定しない表現をOK例として挙げています。

LINEヤフーは、2025年5月12日にLINE広告とYahoo!広告における医薬品・医薬部外品の広告表現の判断基準を統一し、薬機法の解釈に基づく審査基準をYahoo!広告の掲載基準に揃えています。医療機関の広告についても、各媒体のヘルプページで最新の掲載基準を確認したうえで入稿することをおすすめします。

違反するとどうなるか:指導から罰則までの流れ

医療広告ガイドラインへの違反が疑われる場合、都道府県等はまず任意の調査を行い、違反が確認されれば広告の中止や内容の是正を求める行政指導を行うのが基本的な流れです。行政指導に従わない場合や違反を繰り返す悪質なケースでは、次の段階に進みます。

段階

内容

根拠条文

任意の調査・行政指導

説明を求める等の任意調査を経て、広告の中止・内容の是正を求める

報告命令・立入検査

必要な報告を命じる、または広告を行った者の事務所に立ち入り関係文書等を検査する

法第6条の8第1項

中止命令・是正命令

期限を定めて広告の中止・内容の是正を命じる不利益処分(弁明の機会の付与後)

法第6条の8第2項

告発・罰則

虚偽広告や命令違反は6月以下の懲役又は30万円以下の罰金、報告命令・立入検査への違反は20万円以下の罰金

法第87条第1号・第89条第2号

行政処分

悪質な場合は管理者変更命令、開設許可の取り消し、閉鎖命令の対象にもなり得る

法第28条・第29条

中止命令・是正命令に従わなかった場合や、虚偽広告について行政指導に応じなかった場合は、司法警察員への告発が検討されます。行政指導に従わず命令や告発に至った事例は、原則として公表されるともされています。広告代理店や媒体側も、前述のとおり広告依頼者とともに指導等の対象になり得ます。

広告運用者向け:出稿前チェックリスト

最後に、広告文やLPを出稿する前に確認しておきたいポイントを整理します。

  • 広告文・クリエイティブが、虚偽広告・比較優良広告・誇大広告・体験談・ビフォーアフター写真等の禁止表現に該当していないか

  • 広告可能事項の範囲を超える内容(費用、実績、治療の詳しい効果等)を含む場合、限定解除の4要件(自由診療は加えてリスク・副作用の明示)を満たしているか

  • バナー広告・リスティング広告の広告文自体には、限定解除に頼らず広告可能事項の範囲内の表現のみを使っているか

  • SNS広告は、投稿単体または固定投稿等の導線で必要な情報が一体的かつ一覧性を持って提供されているか

  • 医薬品・化粧品等の効能効果表現を含む場合、薬機法上の広告規制にも抵触していないか

  • 出稿先の媒体(Google・Meta・LINEヤフー等)の独自ポリシーも別途確認したか

チェック対象の広告文やLPの本数が多い場合、AIによる一次スクリーニングで確認の負荷を下げる方法もあります。Cascadeの広告表現チェック機能では、広告文やLPの表現を法令・媒体ポリシーの観点から事前にチェックできます。最終的な該当性の判断を代替するものではないため、本記事のチェックリストや厚生労働省の一次資料の確認、専門家への相談とあわせて活用してください。

よくある質問

医療広告で使えないNGな表現にはどのようなものがありますか?

代表的なものとして、虚偽広告(「絶対安全」等の断定表現)、比較優良広告(「日本一」「業界No.1」等の最上級表現)、誇大広告(実態のない団体の認定表示等)、患者の体験談、説明を伴わないビフォーアフター写真、「今なら〇円」のように費用を過度に強調した表現が挙げられます。詳しい類型と具体例は本記事の「医療広告で禁止される表現」で整理しています。

医療広告ガイドラインに違反すると、どうなりますか?

多くの場合、任意の調査を経て行政指導(広告の中止・是正の要請)が行われ、これに従わない、または違反を繰り返すといった悪質なケースでは、報告命令・立入検査、中止命令・是正命令へと進みます。命令に従わない場合や虚偽広告を行った場合は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金の対象になり得るとされています。事案によっては、管理者変更命令や開設許可の取り消しといった行政処分の対象にもなり得ます。

限定解除の要件を満たせば、バナー広告やリスティング広告でも費用や実績を詳しく書けますか?

書けません。限定解除の要件①は「患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告」であることを求めており、厚生労働省のガイドラインはバナー広告やリスティング広告のスポンサー枠がこの要件を満たさないと明記しています。詳しい費用や実績はリンク先のLPで限定解除の要件を満たした上で提供し、バナー広告・リスティング広告の広告文自体は広告可能事項の範囲にとどめる必要があります。

まとめ

医療広告ガイドラインは、医療法第6条の5等に基づき、医業・歯科医業に関する広告表現を、ウェブサイトやSNS、リスティング広告、バナー広告まで含めて規制する厚生労働省の指針です。禁止される表現は虚偽広告・比較優良広告・誇大広告・体験談・ビフォーアフター写真など8つの類型に整理されており、詳しい情報を広告できる「限定解除」にも4つの要件があります。広告運用の実務では、限定解除がバナー広告・リスティング広告では成立しにくいこと、医療法とは別に薬機法や景品表示法、さらに媒体側の広告ポリシーという複数のレイヤーを同時に満たす必要があることが特に見落とされがちなポイントです。出稿前には本記事のチェックリストとあわせて、厚生労働省の一次資料や媒体ヘルプの最新版を確認してください。

参考:厚生労働省・広告媒体の一次資料

本記事の内容は、下記の公表資料に基づいています。実際の広告表現の該当性を判断する際は、必ず一次資料の原文もあわせて確認してください。

本記事は一般的な情報提供であり法的助言ではありません。個別の広告表現の該当性については、厚生労働省・各広告媒体の最新の一次資料をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。(確認日: 2026年8月21日)

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医療広告ガイドラインとは|広告運用者が押さえる禁止事項と限定解除

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医療広告ガイドラインとは|広告運用者が押さえる禁止事項と限定解除
医療広告ガイドラインとは|広告運用者が押さえる禁止事項と限定解除

医療広告ガイドラインとは、医療法第6条の5などの規定を受けて厚生労働省が定めている「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」の通称で、ウェブサイトやSNS、リスティング広告、バナー広告を含む医療機関の広告表現を規制するものです。禁止される表現に該当すれば、行政指導から命令、罰則までの対応につながる可能性があります。

医療広告ガイドラインを解説する記事の多くはクリニックの経営者・院長向けに書かれていますが、実際に広告文やLPの表現をつくり、媒体の入稿・審査に対応するのは広告運用者やマーケターです。本記事では規制の全体像に加えて、限定解除がバナー広告・リスティング広告では成立しにくいという実務上の落とし穴や、Google・Meta・LINEヤフーといった媒体側の広告ポリシーとの二層構造など、運用の現場で判断に迷いやすいポイントを厚生労働省の一次資料に基づいて整理します。

医療広告ガイドラインとは何か

医療広告ガイドラインは、医療法(昭和23年法律第205号)第6条の5などの規定に基づき、医業・歯科医業又は病院・診療所に関する広告のルールを具体化した厚生労働省の指針です。直近では令和8年3月30日に最終改正されており、オンライン診療を受ける施設(オンライン診療受診施設)に関する広告規制を新設した令和7年法律第87号による医療法改正を反映しています。本記事で扱う医業・歯科医業に関する広告規制の骨格自体は、この改正で大きく変わっていません。

医療広告が他分野の広告より厳しく規制されている理由として、厚生労働省は、医療が人の生命・身体に関わるサービスであり不適切な広告による被害が他分野より大きいこと、広告の受け手が広告の文言だけから医療サービスの質を事前に判断することが非常に困難であることの2点を挙げています。

広告に該当する3つの要件

ガイドラインは、次の①〜③をすべて満たす場合に医療法上の「広告」に該当するとしています。

  • ① 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)

  • ② 医業・歯科医業を提供する者の氏名・名称、または病院・診療所の名称が特定可能であること(特定性)

  • ③ 医業・歯科医業又は病院・診療所に関する内容であること

新聞記事のように特定の病院を推薦する内容でも、①の誘引性を欠くとして通常は広告に該当しないとされる一方、同じ内容を医療機関が自らのウェブサイトに掲載する体験談は誘引性ありとして広告に該当し、後述する体験談の禁止規定の対象になるとされています。「これは広告ではありません」といった注記や、記事風広告・タイアップ記事の形式をとっていても、実質的に3要件を満たせば広告として取り扱われる点にも注意が必要です。

規制の対象者と対象媒体(広告代理店・アフィリエイターも対象)

ガイドラインは、規制の対象者を医師・歯科医師や医療機関に限定していません。法第6条の5第1項は「何人も」という主語で規制対象を定めており、厚生労働省はマスコミ、広告代理店、アフィリエイター、患者、一般人など、何人も広告規制の対象になるとしています。広告依頼者から依頼を受けて広告を企画・制作する広告代理店や、広告を掲載する媒体、アフィリエイターについても、内容が虚偽・誇大等になっていないか留意する必要があり、違反があれば広告依頼者とともに指導等の対象になり得るとされています。

対象となる媒体も紙媒体だけではありません。チラシやポスター、看板に加えて、「情報処理の用に供する機器によるもの」としてEメールやインターネット上の広告が明記されており、運用型広告やSNS広告もこの範囲に含まれます。

ウェブサイトが規制対象に含まれた経緯

ウェブサイトは、以前は医療法上の広告として原則規制対象とされておらず、平成24年9月28日付の「医療機関ホームページガイドライン」により業界団体等の自主的な取組に委ねられていました。しかし美容医療に関する相談件数の増加を受け、消費者委員会が2015年7月7日に法的規制の必要性を建議したことを踏まえ、平成29年の通常国会で成立した医療法等の一部を改正する法律(平成29年法律第57号)により、ウェブサイト等も他の広告媒体と同様に規制対象となりました。同じ改正で、患者等が自ら求めて詳しい情報を得られるよう「広告可能事項の限定解除」の制度も設けられています。

医療法・薬機法・景品表示法の関係

医療広告ガイドラインが規制する「医療広告」は、医業・歯科医業又は病院・診療所そのものに関する広告に限られます。同じ医療機関の広告でも、扱う医薬品・医療機器・化粧品の効能効果に関する表現は薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の規制対象になり、誇大な効果効能や不当な価格表示は景品表示法の規制対象にもなり得ます。ガイドライン自体も、医薬品医療機器等法・健康増進法・景品表示法・不正競争防止法に触れながら、他法令に抵触する広告は行うべきではないと明記しています。

具体例として、ガイドラインは「当院ではジェネリック医薬品を採用しております」「AGA治療薬を取り扱っております」のように医薬品名を特定しない表現は広告可能とする一方、「医薬品『○○錠』を処方できます」のように商品名を挙げる表現は薬機法の広告規制の趣旨に照らして広告できないとしています。医薬品・化粧品等の効能効果表現そのものを詳しく確認する際は薬機法の広告表現に関する解説記事を、価格表示や体験談・No.1表示などクリエイティブ全般の景品表示法上の注意点は景品表示法のNG表現チェックリストもあわせて確認してください。「医療『機関』の広告=医療法」「医薬品・化粧品等の広告=薬機法」という区別を押さえておくと、どの規制を確認すべきか判断しやすくなります。

医療広告で禁止される表現【禁止事項一覧】

厚生労働省のガイドラインは、医療広告で禁止される表現を大きく8つの類型に整理しています。

類型

内容

根拠

虚偽広告

広告内容が事実と異なるもの。「絶対安全な手術です」等の断定表現や、加工・修正した術前術後写真を含む

法第6条の5第1項

比較優良広告

他の医療機関と比較して優良である旨の広告。「日本一」「県内一の医師数」等の最上級表現や著名人との関連性の強調を含む

法第6条の5第2項第1号

誇大広告

必ずしも虚偽ではないが、事実を不当に誇張し人を誤認させる広告。「〇〇センター」の名称、実態のない学会・協会の認定表示等

法第6条の5第2項第2号

公序良俗に反する広告

わいせつ・残虐な図画や映像、差別を助長する表現を用いた広告

法第6条の5第2項第3号

広告可能事項以外の広告

法・広告告示で認められた事項以外の広告(死亡率・術後生存率、未承認医薬品による治療内容等)

法第6条の5第3項

患者等の体験談

患者本人や家族の伝聞に基づく、治療の内容・効果に関する主観的な体験談

省令第1条の9第1号

ビフォーアフター写真等

治療内容・費用・主なリスクの説明を伴わない、患者を誤認させるおそれのある術前術後の写真等

省令第1条の9第2号

その他(品位を損ねる広告等)

費用を過度に強調した広告(「今なら〇円」等)、ふざけた表現、他法令で禁止される内容の広告

ガイドライン第3-1(8)

このうち、費用を強調した広告は見落とされがちです。ガイドラインは「今なら〇円でキャンペーン実施中」「期間限定で〇〇療法を50%オフで提供」「〇〇治療し放題プラン」といった表現を、品位を損ねる広告の具体例として挙げています。セールやキャンペーンを前提としたクリエイティブの型は、一般消費財の広告では定番でも、医療広告ではそのまま使えない可能性がある点に注意してください。

なお、医療機関が費用を負担してインフルエンサーや第三者に投稿を依頼した体験談・口コミは、誘引性が認められれば医療広告としての体験談規制の対象になります。表示であることが分かりにくい場合はステルスマーケティング規制(景品表示法)の対象にもなり得るため、体験談・口コミ活用の実務ポイントはステマ規制の解説記事もあわせて確認してください。

広告可能事項の限定解除とは(4つの要件)

医療広告は、原則として法や広告告示で列挙された事項以外を広告できません。ただし、患者等が自ら求めて詳しい情報にアクセスする場合まで一律に制限すると適切な情報提供が妨げられるため、次の①〜④をすべて満たせば、広告可能事項の限定を解除し、通常は広告できない診療内容や費用なども広告できるとされています(自由診療については③④も必須の要件です)。

  • ① 医療に関する適切な選択に資する情報であって、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること

  • ② 表示する情報について、患者等が容易に照会できるよう問い合わせ先を明示すること

  • ③ 自由診療に通常必要とされる治療内容・費用等の情報を提供すること

  • ④ 自由診療に伴う主なリスク・副作用等の情報を提供すること

未承認医薬品等を自由診療で用いる場合は、③④に加えて、未承認であることの明示、個人輸入の場合の入手経路の明示、国内承認医薬品の有無、海外での安全性情報、医薬品副作用被害救済制度の対象外である旨の明示という5点の追加記載が要件になります。

バナー広告・リスティング広告は限定解除の対象になりにくい

広告運用の実務で特に注意が必要なのが、①の要件です。ガイドラインは、インターネット上のバナー広告や、検索連動型のリスティング広告でスポンサーとして表示されるものについて、「患者等が自ら求めて入手する情報」には当たらないため①の要件を満たさないと明記しています。厚生労働省の事例解説書(第6版)も、バナー広告・リスティング広告の広告文そのものに比較優良表現(「業界最安値」等)や費用の強調を含めると、遷移先のLPに治療内容・費用・リスクを詳しく記載していても違反になり得ると説明しています。バナー広告やリスティング広告自体が一律禁止されているわけではありませんが、広告文の中身は限定解除に頼らず、法・広告告示で認められた事項の範囲に収める必要があります。

SNS広告は情報の分散に注意する

SNS広告についても、厚生労働省の事例解説書は、1つの投稿は単独で1つの広告として扱われるとした上で、限定解除の対象にする場合はプロフィール欄・投稿本文・返信(リプライ)の組み合わせや固定投稿への導線などにより、治療内容・費用と主なリスク・副作用の情報が一体的かつ一覧性を持って提供されている必要があるとしています。必要な情報が複数のSNSアカウントに分散していて、いずれか一つのSNSだけでは確認できない構成は、分かりにくい情報提供として避けるべき例に挙げられています。

媒体の広告ポリシーという「もう一つの審査」

医療法や薬機法をクリアしていても、広告を配信する媒体側の独自ポリシーで別の審査が必要になる場合があります。医療広告ガイドラインの遵守と媒体ポリシーの遵守は別のレイヤーであり、両方を満たして初めて出稿できると考えておくのが安全です。

Google広告は「ヘルスケア、医薬品」ポリシーで、処方薬に関するサービスや医薬品メーカー、依存症関連サービスなど複数のカテゴリについて、Googleの認定を受けることを求めています。対象・要件は国や地域によって異なるため、該当しそうな場合はGoogle広告ポリシーヘルプで最新の要件を確認してください。また「健康(パーソナライズド広告の場合)」ポリシーでは、疾病や性に関する健康、長期的な治療・管理が必要な慢性的な健康障害など、デリケートな健康情報を基準にしたカスタマーマッチや類似セグメントなどのオーディエンス設定が制限されています。

Metaは広告基準の「Health and Wellness」で、身体的な特徴を劣っているかのように示す表現や、がん・HIV等の不治・終末期疾患を治療・完治できるとうたう広告を制限しています。加えて「Personal Attributes(個人の属性)」ポリシーでは、閲覧者本人やその家族の健康状態を広告主が知っているかのように示す表現を禁止しており、公式ヘルプは「Do you have diabetes?(糖尿病ですか?)」のような表現をNG例、「New diabetes treatment available(新しい糖尿病治療が利用可能)」のように症状を断定しない表現をOK例として挙げています。

LINEヤフーは、2025年5月12日にLINE広告とYahoo!広告における医薬品・医薬部外品の広告表現の判断基準を統一し、薬機法の解釈に基づく審査基準をYahoo!広告の掲載基準に揃えています。医療機関の広告についても、各媒体のヘルプページで最新の掲載基準を確認したうえで入稿することをおすすめします。

違反するとどうなるか:指導から罰則までの流れ

医療広告ガイドラインへの違反が疑われる場合、都道府県等はまず任意の調査を行い、違反が確認されれば広告の中止や内容の是正を求める行政指導を行うのが基本的な流れです。行政指導に従わない場合や違反を繰り返す悪質なケースでは、次の段階に進みます。

段階

内容

根拠条文

任意の調査・行政指導

説明を求める等の任意調査を経て、広告の中止・内容の是正を求める

報告命令・立入検査

必要な報告を命じる、または広告を行った者の事務所に立ち入り関係文書等を検査する

法第6条の8第1項

中止命令・是正命令

期限を定めて広告の中止・内容の是正を命じる不利益処分(弁明の機会の付与後)

法第6条の8第2項

告発・罰則

虚偽広告や命令違反は6月以下の懲役又は30万円以下の罰金、報告命令・立入検査への違反は20万円以下の罰金

法第87条第1号・第89条第2号

行政処分

悪質な場合は管理者変更命令、開設許可の取り消し、閉鎖命令の対象にもなり得る

法第28条・第29条

中止命令・是正命令に従わなかった場合や、虚偽広告について行政指導に応じなかった場合は、司法警察員への告発が検討されます。行政指導に従わず命令や告発に至った事例は、原則として公表されるともされています。広告代理店や媒体側も、前述のとおり広告依頼者とともに指導等の対象になり得ます。

広告運用者向け:出稿前チェックリスト

最後に、広告文やLPを出稿する前に確認しておきたいポイントを整理します。

  • 広告文・クリエイティブが、虚偽広告・比較優良広告・誇大広告・体験談・ビフォーアフター写真等の禁止表現に該当していないか

  • 広告可能事項の範囲を超える内容(費用、実績、治療の詳しい効果等)を含む場合、限定解除の4要件(自由診療は加えてリスク・副作用の明示)を満たしているか

  • バナー広告・リスティング広告の広告文自体には、限定解除に頼らず広告可能事項の範囲内の表現のみを使っているか

  • SNS広告は、投稿単体または固定投稿等の導線で必要な情報が一体的かつ一覧性を持って提供されているか

  • 医薬品・化粧品等の効能効果表現を含む場合、薬機法上の広告規制にも抵触していないか

  • 出稿先の媒体(Google・Meta・LINEヤフー等)の独自ポリシーも別途確認したか

チェック対象の広告文やLPの本数が多い場合、AIによる一次スクリーニングで確認の負荷を下げる方法もあります。Cascadeの広告表現チェック機能では、広告文やLPの表現を法令・媒体ポリシーの観点から事前にチェックできます。最終的な該当性の判断を代替するものではないため、本記事のチェックリストや厚生労働省の一次資料の確認、専門家への相談とあわせて活用してください。

よくある質問

医療広告で使えないNGな表現にはどのようなものがありますか?

代表的なものとして、虚偽広告(「絶対安全」等の断定表現)、比較優良広告(「日本一」「業界No.1」等の最上級表現)、誇大広告(実態のない団体の認定表示等)、患者の体験談、説明を伴わないビフォーアフター写真、「今なら〇円」のように費用を過度に強調した表現が挙げられます。詳しい類型と具体例は本記事の「医療広告で禁止される表現」で整理しています。

医療広告ガイドラインに違反すると、どうなりますか?

多くの場合、任意の調査を経て行政指導(広告の中止・是正の要請)が行われ、これに従わない、または違反を繰り返すといった悪質なケースでは、報告命令・立入検査、中止命令・是正命令へと進みます。命令に従わない場合や虚偽広告を行った場合は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金の対象になり得るとされています。事案によっては、管理者変更命令や開設許可の取り消しといった行政処分の対象にもなり得ます。

限定解除の要件を満たせば、バナー広告やリスティング広告でも費用や実績を詳しく書けますか?

書けません。限定解除の要件①は「患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告」であることを求めており、厚生労働省のガイドラインはバナー広告やリスティング広告のスポンサー枠がこの要件を満たさないと明記しています。詳しい費用や実績はリンク先のLPで限定解除の要件を満たした上で提供し、バナー広告・リスティング広告の広告文自体は広告可能事項の範囲にとどめる必要があります。

まとめ

医療広告ガイドラインは、医療法第6条の5等に基づき、医業・歯科医業に関する広告表現を、ウェブサイトやSNS、リスティング広告、バナー広告まで含めて規制する厚生労働省の指針です。禁止される表現は虚偽広告・比較優良広告・誇大広告・体験談・ビフォーアフター写真など8つの類型に整理されており、詳しい情報を広告できる「限定解除」にも4つの要件があります。広告運用の実務では、限定解除がバナー広告・リスティング広告では成立しにくいこと、医療法とは別に薬機法や景品表示法、さらに媒体側の広告ポリシーという複数のレイヤーを同時に満たす必要があることが特に見落とされがちなポイントです。出稿前には本記事のチェックリストとあわせて、厚生労働省の一次資料や媒体ヘルプの最新版を確認してください。

参考:厚生労働省・広告媒体の一次資料

本記事の内容は、下記の公表資料に基づいています。実際の広告表現の該当性を判断する際は、必ず一次資料の原文もあわせて確認してください。

本記事は一般的な情報提供であり法的助言ではありません。個別の広告表現の該当性については、厚生労働省・各広告媒体の最新の一次資料をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。(確認日: 2026年8月21日)

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