ステマ規制とは?景品表示法の告示内容・対象になる表示・事業者がすべき対策
ステマ規制とは?景品表示法の告示内容・対象になる表示・事業者がすべき対策

ステマ規制とは、事業者の広告であるにもかかわらず、広告であることを隠した表示(ステルスマーケティング)を、景品表示法の不当表示として規制する制度です。正式には「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年3月28日内閣府告示第19号)という告示で指定され、2023年10月1日に施行されました。規制の対象は広告主である「事業者」で、違反が認められた場合は消費者庁などによる措置命令(行政処分)の対象になります。
本記事では、消費者庁の告示・運用基準・Q&Aという一次情報に沿って、ステマ規制の内容、対象になる表示とならない表示、インフルエンサーやUGCを活用するときの注意点、違反した場合の措置、事業者がすべき対策を順番に解説します。
ステマ規制とは:景品表示法の指定告示
ステマ規制の法的な根拠は、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)第5条第3号に基づく内閣府告示です。告示は、規制の対象を次のように指定しています。
「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」(令和5年3月28日内閣府告示第19号)
かみ砕くと、次の2つの条件を両方満たす表示が、不当表示として規制されます。
事業者の表示であること:広告主である事業者が、表示内容の決定に関与していること
判別困難であること:その表示が事業者の表示(広告)であると、一般消費者が判別することが困難であること
消費者庁の運用基準では、規制の趣旨が次のように説明されています。一般消費者は、事業者の表示(広告)だと分かっていれば「ある程度の誇張・誇大が含まれることはあり得る」と考慮したうえで商品を選べます。ところが、実際には事業者の表示なのに第三者の感想だと誤認すると、その考慮が働かなくなり、消費者の自主的かつ合理的な商品選択が阻害されるおそれがある、という考え方です。
逆にいえば、事業者の表示であることが一般消費者にとって明瞭である、または社会通念上明らかであるものは、告示の対象にはならないと運用基準に明記されています。テレビCMや新聞の広告欄のように「広告だと分かる広告」は、これまでどおり問題ありません。広告であることを隠すことだけが規制の対象です。
規制の対象になるのは「事業者」(広告主)
消費者庁のQ&Aでは、ステマ告示の規制対象は「自己の供給する商品又は役務の取引に関する表示について、その内容の決定に関与した事業者(いわゆる広告主)」とされています。投稿を行ったインフルエンサーやアフィリエイター自身は、原則として規制の対象外です。消費者庁のステルスマーケティング解説ページにも「企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象とはなりません」と明記されています。
ただし、消費者庁のQ&Aでは、インフルエンサー等が広告主と共同して商品等を供給していると認められる例外的な場合には、そのインフルエンサー等も規制の対象になるとされています。自社が「依頼する側」でなくても、共同で商品を販売するような座組みでは当事者になり得る点に注意が必要です。
広告であることの明示が必要になるケース
規制の出発点は、その表示が「事業者の表示」に当たるかどうかです。運用基準では、外形上は第三者の投稿に見えるものでも、事業者が表示内容の決定に関与したと認められる場合(客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合)には事業者の表示に当たるとされています。具体的には次のようなケースです。
事業者が自ら行う表示:事業者自身の投稿のほか、従業員や子会社等の従業員が行った表示も含まれる場合があります。消費者庁のQ&Aでは、従業員の投稿がそれだけで直ちに違反になるわけではなく、その従業員の地位・立場・権限・担当業務・表示目的などの実態から総合的に判断されるとされています。
第三者に行わせる表示:SNSや口コミサイトへの投稿をインフルエンサー等に依頼する場合や、アフィリエイターに委託して自社商品について表示させる場合などが運用基準に例示されています。
明示的に依頼していなくても関与が認められる場合:依頼・指示がなくても、対価の内容やその提供理由、事業者と第三者の関係性などから、第三者の自主的な意思による表示と認められない場合は事業者の表示とされます。ここでいう対価は金銭や物品に限らず、イベント招待などの「経済上の利益」一切が含まれるとされています。
これらに当たる表示を行うときは、後述のとおり「広告」「PR」などの文言で、事業者の表示であることを明瞭に示す必要があります。
対象になる表示・ならない表示(運用基準の例示)
消費者庁の運用基準には、「事業者の表示に当たるかどうか」と「判別困難かどうか」のそれぞれについて例示があります。主な例を表に整理します。いずれも運用基準に挙げられた例であり、実際に該当するかどうかは表示内容全体から個別に判断される点に注意してください。
「事業者の表示」になる例・ならない例
区分 | 運用基準の例示(要約) |
|---|---|
事業者の表示になる例(関与あり) |
|
事業者の表示にならない例(自主的な意思) |
|
ポイントは、金銭のやり取りの有無だけでは決まらないことです。無償提供でも事業者の表示とされる場合がある一方、謝礼があっても投稿内容への関与がなければ事業者の表示に当たらないとされる場合があります。運用基準は、事業者と第三者のやり取りの態様・内容、対価の内容と提供理由、関係性の継続性などから総合的に判断するとしています。
「判別困難」とされる例・「明瞭」とされる例
事業者の表示に当たる場合でも、広告であることが明瞭に示されていれば違反にはなりません。運用基準の例示は次のとおりです。
区分 | 運用基準の例示(要約) |
|---|---|
判別困難とされる例(違反となり得る) |
|
明瞭とされる例・そもそも対象外の例 |
|
「PR」と書きさえすれば安全、というわけではない点が重要です。運用基準は、文言だけでなく表示内容全体から一般消費者にとって明瞭かどうかを判断するとしており、文字の大きさや色、表示位置、動画内での表示時間まで例示に含まれています。
インフルエンサー・UGC活用時の注意点
ステマ規制が実務で特に問題になるのは、インフルエンサー起用やUGC(ユーザー生成コンテンツ)活用の場面です。運用基準の例示に沿って、注意点を整理します。
インフルエンサーへの依頼投稿は「広告」等の明示が必要
報酬を支払ってSNS投稿を依頼する場合は、事業者の表示に当たるため、「広告」「PR」などの文言や「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章で、広告であることを明瞭に示す必要があります。運用基準では、対価は金銭に限らず、物品やイベント招待等の経済上の利益も含むとされているため、「報酬ゼロだから対象外」とは判断できません。
ギフティング(無償提供)は関与の実態で判断される
商品を無償提供して投稿してもらう、いわゆるギフティングは判断が分かれやすい領域です。運用基準では、無償提供を受けた第三者が自主的な意思に基づく内容として表示する場合は事業者の表示に当たらないとされる一方、事業者の方針や内容に沿った投稿をさせる場合や、投稿すれば今後の取引につながることを言動から推認させるような場合には、事業者の表示に当たるとされています。提供時のコミュニケーション内容まで含めて管理し、該当するかどうか迷うケースは個別に判断する必要があります。
UGC・レビューの扱い
顧客が自主的に投稿した口コミやレビューは、事業者が関与していなければ規制の対象ではありません。一方で、レビューの見返りに投稿内容を指定する、ブローカーに好意的レビューを発注するといった行為は、運用基準で事業者の表示の例として挙げられています。また、自社サイトでUGCを引用する場合、良い意見だけを恣意的に抽出したり内容を改変したりせず、そのまま引用する形であれば事業者の表示に当たらないとされています。UGCをマーケティングに活用する際の基本的な考え方は、UGCマーケティングの解説記事もあわせて参考にしてください。
アフィリエイト広告はサイト側の表記まで確認する
運用基準では、アフィリエイトプログラムを用いた表示で、アフィリエイトサイトに事業者の表示であることを記載していない場合が「判別困難」の例として挙げられています。広告主として、掲載先のアフィリエイトサイトに広告である旨の表記があるかどうかまで確認する運用が求められます。
ステマ規制に違反した場合の措置
消費者庁のQ&Aでは、ステマ告示に違反する行為が認められた場合、消費者庁は事業者に対して、不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる措置命令(行政処分)を行うとされています。違反の事実が認められない場合でも、違反のおそれのある行為には指導(行政指導)が行われます。また、消費者庁の解説ページでは、都道府県知事も景品表示法に基づき措置命令を行う権限を持つとされています。
課徴金については、ステマ告示違反は課徴金納付命令の対象にはならないとされています。ただし、消費者庁のQ&Aでは、違反行為の内容に優良誤認表示(品質等の著しい優良誤認)や有利誤認表示(価格等の著しい有利誤認)が含まれる場合には、その行為が課徴金納付命令の対象となることがあるとされています。「広告であることを隠していた」ことに加えて表示内容自体に問題があれば、より重い措置につながり得るということです。
注意したいのは過去の投稿の扱いです。消費者庁のQ&Aでは、施行日(2023年10月1日)より前に行われた「事業者の表示」に当たる投稿でも、施行後も継続して表示されていて、事業者の表示であることが明瞭になっていなければ、告示に違反する不当表示として行政処分の対象となる可能性があるとされています。施行前の依頼投稿も含めた点検が必要です。
事業者がすべき対策チェックリスト
景品表示法第22条は、事業者に対して、不当表示等を未然に防止するために必要な措置を講じることを求めており、その内容は消費者庁の「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(平成26年内閣府告示第276号・最終改正令和6年4月18日)に示されています。指針では、必要な措置の内容は事業者の規模や業態に応じて異なり、例示と同じ措置でなくても、不当表示等を未然に防止するために適切なものであればよいとされています。この指針と運用基準を踏まえると、実務上の対策は次のように整理できます。
社内体制の整備
景品表示法とステマ告示の考え方を、表示に関係する役員・従業員に周知・啓発する(指針に例示されている措置です)
広告・SNS投稿・レビュー施策などの表示物について、公開前に確認する担当者・フローを定める(指針では、小規模企業では代表者を担当者とすることも可能とされています)
従業員が自社商品についてSNS投稿する場合の取り扱い(立場や目的によっては事業者の表示に当たり得ること)を社内ルールに含める
表記ルールの整備
依頼投稿には「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」等の文言、または提供を受けた旨の文章を必ず入れるルールを定める
文言だけでなく、表示位置・文字サイズ・色・動画での表示時間など「一般消費者が認識できるか」の観点で媒体別の基準を作る(運用基準の判別困難の例示が参考になります)
ハッシュタグの中に表記を埋もれさせない、冒頭表記と本文の記述を矛盾させないなど、運用基準の例示をチェック項目に落とし込む
第三者への依頼管理
インフルエンサー・アフィリエイター・制作会社への依頼時に、広告である旨の表記を契約や発注条件で義務付け、公開後の表記を確認する(指針では、表示等の作成を他の事業者に委ねる場合、その事業者に対しても必要な周知・啓発を行うこととされています)
ギフティングでは、提供時の依頼内容・コミュニケーションを記録し、投稿内容への関与の有無を管理する
施行日前の依頼投稿を棚卸しし、表示が継続しているものは表記の追加を依頼する
広告運用の実務での対応
Google広告やMeta広告のような運用型広告は、媒体の広告枠に配信され、広告である旨のラベルが媒体側で表示される仕組みです。一方で、ステマ規制で問題になりやすいのは、広告枠の外で行う施策、つまりインフルエンサー投稿・レビュー施策・アフィリエイト・自社従業員のSNS発信などです。広告運用の担当領域だけでなく、広告クリエイティブ・LP・SNS施策・第三者への依頼をまたいだ表記チェックの体制を作ることが、ステマ規制対応の実務的な要点になります。SNS広告の仕組みや配信面の基本はMeta広告の解説記事で詳しく説明しています。
チェック対象の表示物が多い場合は、ツールで一次スクリーニングを行い、人の確認を要所に集中させる方法もあります。広告運用AIエージェントのCascadeの広告表現チェック機能は、広告文やLPなどの広告表現の法令リスクをAIがチェックし、見直し候補を洗い出す機能です。ただし、ステマ告示への該当性を含む最終的な法的判断を代替するものではないため、判断に迷うケースは消費者庁の運用基準の確認や専門家への相談とあわせて使ってください。
ステマ規制に関するよくある質問
「PR」と表記すれば必ず問題ないですか?
必ずしもそうとは言えません。消費者庁の運用基準では、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言は事業者の表示であることが明瞭な例として挙げられている一方、これらの文言を使用していても、表示内容全体から明瞭になっていると認められない場合もあるとされています。文字の大きさ・色・表示位置・動画内での表示時間などを含めて、一般消費者が認識できる形になっているかどうかで判断されるため、表記の仕方まで含めた確認が必要です。
2023年10月1日より前の投稿もステマ規制の対象になりますか?
対象になる可能性があります。消費者庁のQ&Aでは、施行日より前に行われた「事業者の表示」に当たる投稿が施行後も継続して表示されている場合、事業者の表示であることが明瞭となっていなければ、告示に違反する不当表示として行政処分の対象となる可能性があるとされています。過去の依頼投稿で表示が残っているものは、広告である旨の表記を追加する対応が必要です。
依頼を受けて投稿したインフルエンサー本人も処罰されますか?
規制の対象は、表示内容の決定に関与した事業者(広告主)です。消費者庁は、広告主から依頼を受けて投稿を行うインフルエンサーやアフィリエイターは規制の対象外としています。ただし、Q&Aでは、インフルエンサー等が広告主と共同して商品等を供給していると認められる例外的な場合には規制の対象になるとされています。個別のケースが該当するかどうかは、取引の実態に基づく個別判断が必要です。
まとめ:ステマ規制は「広告であることを隠さない」体制づくりで対応する
ステマ規制は、2023年10月1日に施行された景品表示法の指定告示で、事業者の表示であることを一般消費者が判別困難な表示を不当表示として規制する制度です。規制されるのは広告主である事業者で、違反すれば措置命令の対象になります。対応の軸は、①自社が関与する表示を洗い出す、②「広告」等の明瞭な表記ルールを定める、③インフルエンサーやアフィリエイターへの依頼管理と過去投稿の点検を行う、の3点です。該当するかどうか判断に迷う表示は、消費者庁の運用基準・Q&Aの原文を確認し、必要に応じて専門家に相談してください。
本記事の根拠とした消費者庁の一次資料は次のとおりです。
ステマ規制とは、事業者の広告であるにもかかわらず、広告であることを隠した表示(ステルスマーケティング)を、景品表示法の不当表示として規制する制度です。正式には「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年3月28日内閣府告示第19号)という告示で指定され、2023年10月1日に施行されました。規制の対象は広告主である「事業者」で、違反が認められた場合は消費者庁などによる措置命令(行政処分)の対象になります。
本記事では、消費者庁の告示・運用基準・Q&Aという一次情報に沿って、ステマ規制の内容、対象になる表示とならない表示、インフルエンサーやUGCを活用するときの注意点、違反した場合の措置、事業者がすべき対策を順番に解説します。
ステマ規制とは:景品表示法の指定告示
ステマ規制の法的な根拠は、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)第5条第3号に基づく内閣府告示です。告示は、規制の対象を次のように指定しています。
「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」(令和5年3月28日内閣府告示第19号)
かみ砕くと、次の2つの条件を両方満たす表示が、不当表示として規制されます。
事業者の表示であること:広告主である事業者が、表示内容の決定に関与していること
判別困難であること:その表示が事業者の表示(広告)であると、一般消費者が判別することが困難であること
消費者庁の運用基準では、規制の趣旨が次のように説明されています。一般消費者は、事業者の表示(広告)だと分かっていれば「ある程度の誇張・誇大が含まれることはあり得る」と考慮したうえで商品を選べます。ところが、実際には事業者の表示なのに第三者の感想だと誤認すると、その考慮が働かなくなり、消費者の自主的かつ合理的な商品選択が阻害されるおそれがある、という考え方です。
逆にいえば、事業者の表示であることが一般消費者にとって明瞭である、または社会通念上明らかであるものは、告示の対象にはならないと運用基準に明記されています。テレビCMや新聞の広告欄のように「広告だと分かる広告」は、これまでどおり問題ありません。広告であることを隠すことだけが規制の対象です。
規制の対象になるのは「事業者」(広告主)
消費者庁のQ&Aでは、ステマ告示の規制対象は「自己の供給する商品又は役務の取引に関する表示について、その内容の決定に関与した事業者(いわゆる広告主)」とされています。投稿を行ったインフルエンサーやアフィリエイター自身は、原則として規制の対象外です。消費者庁のステルスマーケティング解説ページにも「企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象とはなりません」と明記されています。
ただし、消費者庁のQ&Aでは、インフルエンサー等が広告主と共同して商品等を供給していると認められる例外的な場合には、そのインフルエンサー等も規制の対象になるとされています。自社が「依頼する側」でなくても、共同で商品を販売するような座組みでは当事者になり得る点に注意が必要です。
広告であることの明示が必要になるケース
規制の出発点は、その表示が「事業者の表示」に当たるかどうかです。運用基準では、外形上は第三者の投稿に見えるものでも、事業者が表示内容の決定に関与したと認められる場合(客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合)には事業者の表示に当たるとされています。具体的には次のようなケースです。
事業者が自ら行う表示:事業者自身の投稿のほか、従業員や子会社等の従業員が行った表示も含まれる場合があります。消費者庁のQ&Aでは、従業員の投稿がそれだけで直ちに違反になるわけではなく、その従業員の地位・立場・権限・担当業務・表示目的などの実態から総合的に判断されるとされています。
第三者に行わせる表示:SNSや口コミサイトへの投稿をインフルエンサー等に依頼する場合や、アフィリエイターに委託して自社商品について表示させる場合などが運用基準に例示されています。
明示的に依頼していなくても関与が認められる場合:依頼・指示がなくても、対価の内容やその提供理由、事業者と第三者の関係性などから、第三者の自主的な意思による表示と認められない場合は事業者の表示とされます。ここでいう対価は金銭や物品に限らず、イベント招待などの「経済上の利益」一切が含まれるとされています。
これらに当たる表示を行うときは、後述のとおり「広告」「PR」などの文言で、事業者の表示であることを明瞭に示す必要があります。
対象になる表示・ならない表示(運用基準の例示)
消費者庁の運用基準には、「事業者の表示に当たるかどうか」と「判別困難かどうか」のそれぞれについて例示があります。主な例を表に整理します。いずれも運用基準に挙げられた例であり、実際に該当するかどうかは表示内容全体から個別に判断される点に注意してください。
「事業者の表示」になる例・ならない例
区分 | 運用基準の例示(要約) |
|---|---|
事業者の表示になる例(関与あり) |
|
事業者の表示にならない例(自主的な意思) |
|
ポイントは、金銭のやり取りの有無だけでは決まらないことです。無償提供でも事業者の表示とされる場合がある一方、謝礼があっても投稿内容への関与がなければ事業者の表示に当たらないとされる場合があります。運用基準は、事業者と第三者のやり取りの態様・内容、対価の内容と提供理由、関係性の継続性などから総合的に判断するとしています。
「判別困難」とされる例・「明瞭」とされる例
事業者の表示に当たる場合でも、広告であることが明瞭に示されていれば違反にはなりません。運用基準の例示は次のとおりです。
区分 | 運用基準の例示(要約) |
|---|---|
判別困難とされる例(違反となり得る) |
|
明瞭とされる例・そもそも対象外の例 |
|
「PR」と書きさえすれば安全、というわけではない点が重要です。運用基準は、文言だけでなく表示内容全体から一般消費者にとって明瞭かどうかを判断するとしており、文字の大きさや色、表示位置、動画内での表示時間まで例示に含まれています。
インフルエンサー・UGC活用時の注意点
ステマ規制が実務で特に問題になるのは、インフルエンサー起用やUGC(ユーザー生成コンテンツ)活用の場面です。運用基準の例示に沿って、注意点を整理します。
インフルエンサーへの依頼投稿は「広告」等の明示が必要
報酬を支払ってSNS投稿を依頼する場合は、事業者の表示に当たるため、「広告」「PR」などの文言や「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章で、広告であることを明瞭に示す必要があります。運用基準では、対価は金銭に限らず、物品やイベント招待等の経済上の利益も含むとされているため、「報酬ゼロだから対象外」とは判断できません。
ギフティング(無償提供)は関与の実態で判断される
商品を無償提供して投稿してもらう、いわゆるギフティングは判断が分かれやすい領域です。運用基準では、無償提供を受けた第三者が自主的な意思に基づく内容として表示する場合は事業者の表示に当たらないとされる一方、事業者の方針や内容に沿った投稿をさせる場合や、投稿すれば今後の取引につながることを言動から推認させるような場合には、事業者の表示に当たるとされています。提供時のコミュニケーション内容まで含めて管理し、該当するかどうか迷うケースは個別に判断する必要があります。
UGC・レビューの扱い
顧客が自主的に投稿した口コミやレビューは、事業者が関与していなければ規制の対象ではありません。一方で、レビューの見返りに投稿内容を指定する、ブローカーに好意的レビューを発注するといった行為は、運用基準で事業者の表示の例として挙げられています。また、自社サイトでUGCを引用する場合、良い意見だけを恣意的に抽出したり内容を改変したりせず、そのまま引用する形であれば事業者の表示に当たらないとされています。UGCをマーケティングに活用する際の基本的な考え方は、UGCマーケティングの解説記事もあわせて参考にしてください。
アフィリエイト広告はサイト側の表記まで確認する
運用基準では、アフィリエイトプログラムを用いた表示で、アフィリエイトサイトに事業者の表示であることを記載していない場合が「判別困難」の例として挙げられています。広告主として、掲載先のアフィリエイトサイトに広告である旨の表記があるかどうかまで確認する運用が求められます。
ステマ規制に違反した場合の措置
消費者庁のQ&Aでは、ステマ告示に違反する行為が認められた場合、消費者庁は事業者に対して、不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる措置命令(行政処分)を行うとされています。違反の事実が認められない場合でも、違反のおそれのある行為には指導(行政指導)が行われます。また、消費者庁の解説ページでは、都道府県知事も景品表示法に基づき措置命令を行う権限を持つとされています。
課徴金については、ステマ告示違反は課徴金納付命令の対象にはならないとされています。ただし、消費者庁のQ&Aでは、違反行為の内容に優良誤認表示(品質等の著しい優良誤認)や有利誤認表示(価格等の著しい有利誤認)が含まれる場合には、その行為が課徴金納付命令の対象となることがあるとされています。「広告であることを隠していた」ことに加えて表示内容自体に問題があれば、より重い措置につながり得るということです。
注意したいのは過去の投稿の扱いです。消費者庁のQ&Aでは、施行日(2023年10月1日)より前に行われた「事業者の表示」に当たる投稿でも、施行後も継続して表示されていて、事業者の表示であることが明瞭になっていなければ、告示に違反する不当表示として行政処分の対象となる可能性があるとされています。施行前の依頼投稿も含めた点検が必要です。
事業者がすべき対策チェックリスト
景品表示法第22条は、事業者に対して、不当表示等を未然に防止するために必要な措置を講じることを求めており、その内容は消費者庁の「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(平成26年内閣府告示第276号・最終改正令和6年4月18日)に示されています。指針では、必要な措置の内容は事業者の規模や業態に応じて異なり、例示と同じ措置でなくても、不当表示等を未然に防止するために適切なものであればよいとされています。この指針と運用基準を踏まえると、実務上の対策は次のように整理できます。
社内体制の整備
景品表示法とステマ告示の考え方を、表示に関係する役員・従業員に周知・啓発する(指針に例示されている措置です)
広告・SNS投稿・レビュー施策などの表示物について、公開前に確認する担当者・フローを定める(指針では、小規模企業では代表者を担当者とすることも可能とされています)
従業員が自社商品についてSNS投稿する場合の取り扱い(立場や目的によっては事業者の表示に当たり得ること)を社内ルールに含める
表記ルールの整備
依頼投稿には「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」等の文言、または提供を受けた旨の文章を必ず入れるルールを定める
文言だけでなく、表示位置・文字サイズ・色・動画での表示時間など「一般消費者が認識できるか」の観点で媒体別の基準を作る(運用基準の判別困難の例示が参考になります)
ハッシュタグの中に表記を埋もれさせない、冒頭表記と本文の記述を矛盾させないなど、運用基準の例示をチェック項目に落とし込む
第三者への依頼管理
インフルエンサー・アフィリエイター・制作会社への依頼時に、広告である旨の表記を契約や発注条件で義務付け、公開後の表記を確認する(指針では、表示等の作成を他の事業者に委ねる場合、その事業者に対しても必要な周知・啓発を行うこととされています)
ギフティングでは、提供時の依頼内容・コミュニケーションを記録し、投稿内容への関与の有無を管理する
施行日前の依頼投稿を棚卸しし、表示が継続しているものは表記の追加を依頼する
広告運用の実務での対応
Google広告やMeta広告のような運用型広告は、媒体の広告枠に配信され、広告である旨のラベルが媒体側で表示される仕組みです。一方で、ステマ規制で問題になりやすいのは、広告枠の外で行う施策、つまりインフルエンサー投稿・レビュー施策・アフィリエイト・自社従業員のSNS発信などです。広告運用の担当領域だけでなく、広告クリエイティブ・LP・SNS施策・第三者への依頼をまたいだ表記チェックの体制を作ることが、ステマ規制対応の実務的な要点になります。SNS広告の仕組みや配信面の基本はMeta広告の解説記事で詳しく説明しています。
チェック対象の表示物が多い場合は、ツールで一次スクリーニングを行い、人の確認を要所に集中させる方法もあります。広告運用AIエージェントのCascadeの広告表現チェック機能は、広告文やLPなどの広告表現の法令リスクをAIがチェックし、見直し候補を洗い出す機能です。ただし、ステマ告示への該当性を含む最終的な法的判断を代替するものではないため、判断に迷うケースは消費者庁の運用基準の確認や専門家への相談とあわせて使ってください。
ステマ規制に関するよくある質問
「PR」と表記すれば必ず問題ないですか?
必ずしもそうとは言えません。消費者庁の運用基準では、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言は事業者の表示であることが明瞭な例として挙げられている一方、これらの文言を使用していても、表示内容全体から明瞭になっていると認められない場合もあるとされています。文字の大きさ・色・表示位置・動画内での表示時間などを含めて、一般消費者が認識できる形になっているかどうかで判断されるため、表記の仕方まで含めた確認が必要です。
2023年10月1日より前の投稿もステマ規制の対象になりますか?
対象になる可能性があります。消費者庁のQ&Aでは、施行日より前に行われた「事業者の表示」に当たる投稿が施行後も継続して表示されている場合、事業者の表示であることが明瞭となっていなければ、告示に違反する不当表示として行政処分の対象となる可能性があるとされています。過去の依頼投稿で表示が残っているものは、広告である旨の表記を追加する対応が必要です。
依頼を受けて投稿したインフルエンサー本人も処罰されますか?
規制の対象は、表示内容の決定に関与した事業者(広告主)です。消費者庁は、広告主から依頼を受けて投稿を行うインフルエンサーやアフィリエイターは規制の対象外としています。ただし、Q&Aでは、インフルエンサー等が広告主と共同して商品等を供給していると認められる例外的な場合には規制の対象になるとされています。個別のケースが該当するかどうかは、取引の実態に基づく個別判断が必要です。
まとめ:ステマ規制は「広告であることを隠さない」体制づくりで対応する
ステマ規制は、2023年10月1日に施行された景品表示法の指定告示で、事業者の表示であることを一般消費者が判別困難な表示を不当表示として規制する制度です。規制されるのは広告主である事業者で、違反すれば措置命令の対象になります。対応の軸は、①自社が関与する表示を洗い出す、②「広告」等の明瞭な表記ルールを定める、③インフルエンサーやアフィリエイターへの依頼管理と過去投稿の点検を行う、の3点です。該当するかどうか判断に迷う表示は、消費者庁の運用基準・Q&Aの原文を確認し、必要に応じて専門家に相談してください。
本記事の根拠とした消費者庁の一次資料は次のとおりです。


