
ファーストパーティデータとは、自社のウェブサイトや会員システム、CRMなど、顧客との直接的な接点を通じて自社が収集するデータのことです。外部のデータ提供事業者を介さずに取得するため精度と信頼性が高く、サードパーティCookie(クッキー)を巡る規制環境が変化する中で、広告運用やCRMマーケティングの基盤としての重要性が高まっています。
本記事では、ファーストパーティデータの定義とゼロパーティデータとの違い、Cookie規制の現在地、具体的な収集方法、そして広告運用での活用方法までを解説します。
ファーストパーティデータとは?0・1st・2nd・3rdパーティデータの違い
ファーストパーティデータとは、自社が顧客との直接的な接点(自社サイト、アプリ、会員システム、店舗など)を通じて取得するデータを指します。取得元が自社であるため、データの出所や取得経緯を正確に把握でき、精度・信頼性の面で優位性があります。データはさらに、取得元や顧客の関与の仕方によってゼロパーティ・セカンドパーティ・サードパーティの4区分に整理でき、それぞれ広告運用における役割が異なります。
4種類のデータの対応表
それぞれの違いを整理すると、以下のとおりです。
区分 | 取得元 | 具体例 | 精度・信頼性 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
ゼロパーティデータ | 顧客が自らの意思で企業に提供 | アンケート回答、購入意向、好みの登録情報 | 非常に高い(本人の明示的な意思表示) | パーソナライズ、商品開発、One to Oneコミュニケーション |
ファーストパーティデータ | 自社が顧客との接点から直接取得 | サイト行動履歴、購買・会員データ、CRM情報 | 高い(自社が取得経路を把握) | 広告配信、LTV分析、既存顧客への再アプローチ |
セカンドパーティデータ | 提携先企業のファーストパーティデータを共有 | 提携企業の会員データ、共同キャンペーンの参加者データ | 中程度(提携先の取得品質に依存) | 提携マーケティング、相互送客 |
サードパーティデータ | データ提供会社が複数の外部ソースから収集・集約 | 属性推定データ、興味関心セグメント | 相対的に低い(本人との直接接点がない) | 新規層へのリーチ拡大、認知獲得 |
実務上は、ファーストパーティデータを土台としながら、目的に応じてゼロパーティデータやセカンドパーティデータを組み合わせる設計が一般的です。一方でサードパーティデータは、本人との直接の接点がないため精度に限界があり、次章で解説するブラウザ側の規制強化の影響も受けやすいという特徴があります。
この4区分は、データを「誰が」「どのように」取得したかという観点で整理したものです。広告運用においては、どの区分のデータをどの目的で使うかを意識して設計することが、配信精度と法令対応の両立につながります。ファーストパーティデータが重視される背景には、自社が取得経路を管理できるため由来や同意状況を追跡しやすく、サードパーティCookieに依存しない分、ブラウザ側の仕様変更による計測断絶のリスクを抑えられるという理由があります。
なぜ今重要か?Cookie規制の現在地
結論として、Googleは2024年以降、Chromeにおいてサードパーティクッキー(Cookie)を一律に廃止する計画を撤回し、ユーザーが自身で選択できる方式を維持する方針へ転換しました。ただし、計測やターゲティングを支えるPrivacy Sandbox関連の技術については、2025年10月に主要APIの縮小・廃止方針が発表されており、状況は流動的です。加えてSafariは以前からサードパーティCookieを既定でブロックしており、ブラウザによって前提が異なる点を踏まえておく必要があります。
Chrome:廃止方針の撤回とPrivacy Sandboxの縮小
Googleは2024年7月22日、公式ブログでサードパーティCookieを一律廃止する計画に代えて、ユーザーが自身の閲覧に関する選択を行える新しい仕組みをChromeに導入する方針を発表しました。2025年4月22日には同方針を維持することをあらためて表明し、独立した選択プロンプトの新規導入は行わないとしています。
その一方で2025年10月17日には、Topics API・Protected Audience API・Attribution Reporting APIなど、Privacy Sandboxを構成する複数の技術について、「エコシステムからのフィードバックと利用状況の低さ」を理由に縮小・廃止する方針が発表されました。この発表の時点で具体的な廃止期限は示されておらず、Chrome・Androidそれぞれの段階的なプロセスに従うとされています。最新の実施時期は、Googleの開発者向けサイトで随時更新される見込みです。
Safari・その他ブラウザ:既定でブロックする方針を継続
Safariを開発するWebKitは公式に、「Intelligent Tracking Prevention(ITP)は例外なく、デフォルトですべてのサードパーティCookieをブロックする」と説明しています。Firefoxなど他の主要ブラウザでも、既定でトラッキング目的のCookieを制限する流れが続いています。Chromeの対応が流動的である一方、Safari利用者を含むトラフィックはすでにサードパーティCookieに依存した計測・配信が機能しにくい状態にあるため、ファーストパーティデータを軸にした設計が現実的な選択肢になります。
広告運用の観点では、Cookieを巡る技術動向を注視しつつも、その都度計測基盤を作り直すのではなく、自社が管理できるファーストパーティデータを中心に据えた設計へ段階的に移行しておくことが、長期的なリスクを抑える現実的なアプローチです。
ゼロパーティデータとの違い・使い分け
ファーストパーティデータとゼロパーティデータの違いは、データが生まれる経緯にあります。ファーストパーティデータは主に顧客の行動を観察して得られる黙示的なデータを含む広い概念であるのに対し、ゼロパーティデータはアンケートや会員設定など、顧客が自らの意思で企業に提供する明示的なデータです。両者は代替関係ではなく、組み合わせて顧客理解を補完し合う関係にあります。
行動データと意思データの違い
たとえば、あるユーザーが特定の商品ページを繰り返し閲覧した履歴はファーストパーティデータですが、そのユーザーがアンケートで「次回購入したいカテゴリー」を回答した内容はゼロパーティデータにあたります。前者は行動から推測する情報、後者は本人が明言した情報という違いがあります。
広告運用における使い分け
広告運用では、ファーストパーティデータを配信対象となる母集団の作成に、ゼロパーティデータをクリエイティブやオファーの精度向上に使い分けるのが基本的な考え方です。両方を組み合わせることで、単独では得にくい解像度で顧客像を描けます。
「ゼロパーティデータ」という呼び方は、顧客が能動的に提供する情報を、行動観察によって得られるファーストパーティデータと区別するために使われるようになった呼称です。同意に基づいて明示的に提供される情報であるため、活用にあたっての説明や同意取得の負荷が比較的軽いという特徴もあります。
ファーストパーティデータの収集方法
ファーストパーティデータは、自社サイトやアプリの行動ログ、会員登録・フォーム、CRMや購買データ、アンケートなど、顧客との接点ごとに収集します。いずれの方法でも、取得する情報の利用目的をあらかじめ明示し、必要に応じて同意を取得することが前提になります。
自社サイト・アプリの行動データ
閲覧ページ、滞在時間、カート投入などの行動ログです。Cookieやアプリのログイン情報を通じて取得することが一般的で、取得にあたっては後述する電気通信事業法の外部送信規律への対応が必要になる場合があります。
会員登録・フォーム
会員登録、資料請求、問い合わせフォームなどを通じて取得する属性情報です。取得項目を必要最小限にとどめ、利用目的をフォーム上で明示することが望まれます。
CRM・購買データ・POSデータ
受注データ、購買履歴、店舗のPOSデータなどです。オンライン・オフラインを横断して顧客を識別できるため、後述するオフラインコンバージョンや顧客リストの活用の基盤になります。
アンケート・カスタマーサポート
顧客満足度調査や問い合わせ対応から得られる定性的な情報です。行動データだけでは分からない購入理由や不満点を補完でき、前章のゼロパーティデータとも重なる部分があります。
複数の接点で取得したデータは、氏名の表記ゆれやメールアドレスの重複などにより、同一人物として認識されないことがあります。突合キーとなる項目の形式を統一し、名寄せの精度を高めておくことが、次章で解説する広告活用の前提になります。
広告運用での活用:4つの経路
ファーストパーティデータを広告運用に活用する主な経路は、①Googleカスタマーマッチ、②Metaカスタムオーディエンス(顧客リスト)、③拡張コンバージョンやコンバージョンAPI(CAPI)などの計測強化、④オフラインコンバージョンによる受注データ連携の4つです。いずれも顧客データを媒体側のシステムに安全な形式で連携し、配信の精度や計測の網羅性を高める仕組みです。
① Googleカスタマーマッチ
Googleカスタマーマッチは、メールアドレスや電話番号などの顧客リストをGoogle広告に連携し、既存顧客への配信や除外、類似ユーザーの獲得に活用できる機能です。利用にはアカウントの実績が関わり、ポリシーを遵守しているアカウントは「モニタリング」設定と除外設定で利用でき、Google広告の利用実績が90日以上かつ累計利用金額が5万米ドルを超えるアカウントは、「ターゲティング」設定を含むフル機能を利用できます。アップロードするデータはSHA256でハッシュ化され、Google側はオーディエンス作成とポリシー確認の完了後にファイルを保持しません。
配信先としては、既存顧客への再アプローチだけでなく、類似ユーザー機能と組み合わせた新規顧客の獲得にも活用されます。
② Metaカスタムオーディエンス(顧客リスト)
Meta広告のカスタムオーディエンスでは、メールアドレスや電話番号、氏名などの識別子をSHA256でハッシュ化してアップロードします。メールアドレスは小文字化と前後の空白除去、電話番号は記号・英字・先頭のゼロを除去するといった正規化が求められます。一方、外部システムのユーザーID(EXTERN_ID)やモバイル広告ID(MADID)などはハッシュ化せずに使用します。
アップロードした顧客リストは、既存顧客向けの配信だけでなく、類似オーディエンスの作成による新規層の開拓にも使われます。
③ 拡張コンバージョン・CAPIなどの計測強化
拡張コンバージョンやコンバージョンAPI(CAPI)は、自社で取得したメールアドレスなどのファーストパーティデータをハッシュ化して媒体側に送信し、Cookieだけに頼らずコンバージョン計測の精度を補完する仕組みです。ブラウザ側の制約を受けにくいサーバーサイドの計測経路として、複数の媒体で導入が進んでいます。
④ オフラインコンバージョン(受注データ連携)
オフラインコンバージョンは、電話や来店、商談など、広告のクリック後にサイト外で発生した成果を、受注データと突合して広告媒体側にフィードバックする仕組みです。CRMや基幹システムに蓄積された受注データをファーストパーティデータとして活用する代表的な経路といえます。来店や商談の成立といった情報を受注データとして整備しておくことで、Web上の行動だけでは見えない成果を広告の評価軸に組み込めます。
CRMデータを広告に接続する実務ステップ
CRMデータを広告に接続する実務は、データの棚卸しと同意状況の確認から始め、突合キーの整理、連携方式の設計、配信・除外設定への反映、効果検証という順で進めるのが基本です。CRMマーケティングの観点では、受注データと広告データを突合できる状態を作ることが土台になります。
ステップの流れ
まず自社が保有するデータの種類と同意取得状況を棚卸しし、広告連携に使える範囲を確認します。次にメールアドレスや電話番号など、媒体をまたいで顧客を識別するための突合キーを整理し、フォーマットを統一します。そのうえで、API連携かファイルアップロードかといった連携方式とハッシュ化の要否を設計し、各媒体の配信・除外設定に反映します。最後に、配信結果をLTVやCACなどの指標で検証し、データ連携の効果を継続的に見直します。
特に同意状況の確認とハッシュ化などのセキュリティ対応は、連携方式を決める前の設計段階で担当者間の認識をそろえておくとスムーズです。
CascadeではHubSpot・Salesforce・CSVの受注データを広告データと突合し、媒体へのオフラインコンバージョン連携や顧客リストの媒体横断同期に活用できます。
法令・プライバシー上の留意点
ファーストパーティデータを扱う際は、個人情報保護法における個人関連情報の第三者提供規制と、電気通信事業法の外部送信規律の2つを押さえておく必要があります。いずれも、データを外部の広告媒体などに渡す・送信する場面で本人への説明や同意が求められる制度です。
個人情報保護法:個人関連情報の第三者提供規制
個人情報保護法上、「個人関連情報」とは、生存する個人に関する情報であって、個人情報・仮名加工情報・匿名加工情報のいずれにも該当しないものと定義されています(同法第2条第7項)。Cookie経由の閲覧履歴などが該当し得ます。個人関連情報を第三者に提供する際、提供先がその情報を個人データとして取得することが想定される場合には、提供元が本人の同意を確認する必要があります(同法第31条第1項)。広告データの連携が個人データの取得にあたるかどうかは連携方法によって判断が分かれる場合があります。詳細は個人情報保護委員会の公表資料を確認することをおすすめします。
電気通信事業法:外部送信規律
2023年6月16日に施行された改正電気通信事業法では、Cookie等を通じて利用者の情報を外部のサーバーに送信する際のルール(外部送信規律)が新設されました。対象は登録・届出を要する電気通信事業者に限らず、第三号事業を営む事業者など幅広い事業者に及ぶとされています。対応方法としては、送信する情報の内容や送信先を通知または公表する、送信前に同意を取得する、あるいは送信を停止できるオプトアウト手段を用意する、のいずれかが基本とされています。自社サイトが対象事業者に該当するかどうかや具体的な対応方法は個別の事業内容によって判断が求められる場合がありますので、総務省の公表資料をあわせてご確認ください。
実務上は、Cookie取得の時点で外部送信規律への対応を行い、広告媒体へのデータ連携の時点で個人情報保護法上の同意状況をあらためて確認するという、2段階でチェックする体制が現実的です。
集めたファーストパーティデータを分析して広告に活かす手順は顧客分析の手法とフレームワーク(広告への活かし方)にまとめています。
よくある質問
Q1. ファーストパーティデータとサードパーティデータの違いは何ですか?
最大の違いは取得元です。ファーストパーティデータは自社が顧客との直接の接点から取得するのに対し、サードパーティデータはデータ提供会社が複数の外部ソースから収集・集約したものです。ファーストパーティデータは取得経緯を自社が把握できるため精度が高く、サードパーティデータはブラウザ側の規制強化の影響を受けやすいという違いがあります。
Q2. ゼロパーティデータとファーストパーティデータはどう違いますか?
ゼロパーティデータは、アンケート回答や会員設定など、顧客が自らの意思で企業に提供する明示的なデータです。一方ファーストパーティデータは、サイトの行動履歴のように顧客の行動を観察して得られる黙示的なデータも含む、より広い概念です。ゼロパーティデータはファーストパーティデータの一部として整理されることもあります。
Q3. ファーストパーティデータを広告に活用する際、同意は必要ですか?
データの種類や連携方法によって必要な対応が異なります。Cookie等の外部送信を伴う場合は電気通信事業法の外部送信規律への対応が、広告媒体への第三者提供が個人データの取得にあたる場合は個人情報保護法上の同意確認が、それぞれ求められる場合があります。具体的な該当性は個別の実装によって判断が分かれるため、個人情報保護委員会や総務省の公表資料を確認しながら進めることをおすすめします。
まとめ
ファーストパーティデータは、自社が顧客との直接の接点から取得する、精度と信頼性に優れたデータです。サードパーティCookieを取り巻く規制環境が変化を続ける中で、ゼロパーティデータやCRMデータと組み合わせながら、広告運用の土台として整備しておく重要性は今後も変わらないと考えられます。まずは自社が保有するデータの棚卸しと同意状況の確認から始め、Googleカスタマーマッチやオフラインコンバージョンといった具体的な活用経路につなげていくことをおすすめします。規制環境や媒体側の仕様は今後も変わり得るため、収集・連携方法を定期的に見直せる運用体制を整えておくと安心です。








