
Google広告の管理画面で「拡張コンバージョンをオンにしてください」という案内を見て、何を設定すればよいのか迷っていないでしょうか。拡張コンバージョンとは、自社サイトやリードフォームで取得したメールアドレス等のファーストパーティデータをハッシュ化してGoogleに送信し、既存のコンバージョンタグでは捕捉しきれないコンバージョンを補完する機能です。本記事では、仕組み、ウェブ向け・リード向けの違い、Googleタグ・タグマネージャー・APIによる設定方法、導入時の注意点をGoogle広告ヘルプの公式情報をもとに解説します。
拡張コンバージョンとは
拡張コンバージョンとは、Google広告のコンバージョン計測を補完する機能です。ユーザーが自社サイトやリードフォームで入力したメールアドレス・氏名・住所・電話番号等のファーストパーティデータを、コンバージョン発生時に取得しSHA-256という一方向のハッシュ関数で変換したうえでGoogleに送信します。Googleはこのハッシュ化データを、広告クリック時にログインしていたGoogleユーザーの情報と照合し、一致すればコンバージョンとして計測に反映します(詳しい流れは次章で解説)。
ブラウザによるサードパーティCookieの制限や、Cookieを保存しないユーザーの増加により、従来のコンバージョンタグだけではクリックとサイト上の行動を結びつけられないケースが増えています。Google広告ヘルプの「拡張コンバージョンについて」では「既存のコンバージョン タグを補完するもの」と説明されており、単体で使う機能ではなく既存のコンバージョンタグによるコンバージョン計測に追加で重ねて設定するものである点がポイントです。
拡張コンバージョンには、ウェブサイト上で完結する取引を対象にした「拡張コンバージョン(ウェブ向け)」と、電話や商談などサイト外で成約するリードを対象にした「リードの拡張コンバージョン」の2種類があります。両者の違いは3章で詳しく比較します。
仕組み|ハッシュ化と照合のながれ
拡張コンバージョンは、次の5つのステップでコンバージョンデータを補完します。実装するタグやツール(gtag.js・Googleタグマネージャー・API)によって細部は異なりますが、基本的な流れは共通しています。
ステップ | 内容 |
|---|---|
①データ取得 | ユーザーが購入・問い合わせ・資料請求等のコンバージョンを完了した際、フォームや購入情報からメールアドレス・氏名・住所・電話番号等のファーストパーティデータを取得します。 |
②ハッシュ化 | 取得したデータを、SHA-256という一方向のハッシュ関数で変換します。ハッシュ化された文字列から元の個人情報を逆算することはできません。 |
③Googleへの送信 | ハッシュ化データをコンバージョン発生の情報とあわせてGoogleに送信します。送信経路はGoogleタグ・タグマネージャー・API(データマネージャー含む)のいずれかです。 |
④照合 | Google側で、送信されたハッシュ化データと、広告をクリックした際にログインしていたGoogleユーザーのアカウント情報を照合します。 |
⑤計測への反映 | 照合が一致すればコンバージョンとして計測データに反映されます(反映には一定の期間がかかります。目安はFAQで解説)。 |
このうち②のハッシュ化はブラウザやGoogleのサーバー上で行われるため、広告運用者が生の個人情報を平文でやり取りする工程はありません。ただし個人データを取り扱う仕組みであることに変わりはないため、社内の取り扱いルールは別途整理しておく必要があります(詳しくは7章)。
拡張コンバージョンの2つの種類|ウェブ向けとリードの拡張コンバージョン
拡張コンバージョンには、対象とする取引の発生場所によって2つの種類があります。名称が似ているため混同しやすいので、まずは違いを整理します。
「拡張コンバージョン(ウェブ向け)」は、ECサイトの購入完了ページや資料請求フォームなど、ウェブサイト上で完結するコンバージョンを対象にします。ユーザーがサイト上で入力した情報をその場でハッシュ化して送信するため、比較的シンプルに導入できます。
一方「リードの拡張コンバージョン」は、問い合わせフォームや資料請求フォームで獲得した見込み客(リード)が、電話や商談などサイト外でのやり取りを経て成約に至るケースを対象にします。フォーム送信時点ではまだコンバージョンとして計上されず、後日、営業担当者がCRMなどに記録した成約情報をもとに、あらかじめハッシュ化しておいたメールアドレスなどを使って遡って計上する点が特徴です。BtoBや不動産、人材、保険などリードタイムの長い業種で使われることが多く、実務では英語表記の頭文字を取って「EC4L」と略されることもあります。
項目 | 拡張コンバージョン(ウェブ向け) | リードの拡張コンバージョン |
|---|---|---|
対象となる成果 | ウェブサイト上で完結する購入・申込などのオンライン取引 | フォーム等で獲得したリードが、サイト外(電話・商談等)で成約する取引 |
データ取得のタイミング | コンバージョン発生と同時にその場で取得 | フォーム送信時に取得し、成約時に遡って計上 |
主なデータソース | 購入・申込の完了ページ | リードフォーム+CRM等に記録された成約情報 |
典型的な業種 | EC、サブスクリプション等 | BtoB、不動産、人材、保険等リードタイムの長い業種 |
位置づけ | 既存のコンバージョンタグを補完 | オフライン コンバージョンのインポートをアップグレードしたもの |
Google広告ヘルプでは、この2つの設定が単一のアカウント単位のオン/オフ設定に統合される方針が案内されており、対応が済んでいないアカウントも順次自動移行されるとされています。実装方法を細かく使い分ける必要性は今後小さくなる見込みですが、本記事執筆時点(2026年8月)では設定画面上、目的に応じてどちらの機能かを意識して選択する場面が残っています。
拡張コンバージョンの設定方法|Googleタグ・タグマネージャー・APIの3つの経路
拡張コンバージョンの設定は、大きく分けて3つの経路があります。ウェブ向け・リード向けで基本的な選択肢は共通していますが、画面上の項目名や手順の細部は異なります。本章は2026年8月時点のGoogle広告ヘルプに基づく概要です。管理画面の項目名は変更される可能性があるため、実際に設定する際は必ず最新のヘルプページで手順をご確認ください。
Googleタグ(gtag.js)で設定する
自社サイトにGoogleタグ(gtag.js)を直接設置している場合の方法です。管理画面の[目標]→[設定]で拡張コンバージョンをオンにし、顧客データに関する利用規約に同意のうえ、データ送信方法として[Googleタグ]を選択します。データ取得方法は、フォーム入力項目の自動検出、CSSセレクタ/JavaScript変数での指定、コードスニペットでハッシュ化済みデータを渡す方法の3通りです。メールアドレス(推奨)・住所・電話番号のうち少なくとも1つが必須です。リードの拡張コンバージョンを直接設定する場合は、自動イベント検出の設定と、オフライン コンバージョンを対象にしたコンバージョン アクションの作成も必要です。
Googleタグマネージャー(GTM)で設定する
GTMでGoogleタグを配信している場合は、GTM側で「ユーザー提供データ機能」を許可したうえで、Google広告側の設定画面で送信方法として[Googleタグ マネージャー]を選択し、ドメインを確認します。データ取得方法はGoogleタグ単体の場合と同様に3通りで、データレイヤーにハッシュ化前の変数が既にあればそのまま活用できます。リードの拡張コンバージョンをGTMで設定する場合も流れは共通していますが、事前に自動タグ設定を有効にし、フォーム送信時にユーザー提供データを取得できる状態にしておく必要があります。
Google Ads API/Data Manager APIで設定する
API経由での実装は、自社のCRMやMAツールと連携させたい場合や、サーバーサイドでハッシュ化・送信処理を完結させたい場合に選ばれます。拡張コンバージョン(ウェブ向け)は、設定画面でデータ送信方法として[Google Ads API]を選択したうえで、コンバージョン発生から24時間以内を目安にAPI経由でハッシュ化済みデータを送信する実装です。
一方、リードの拡張コンバージョンやオフライン コンバージョンのインポートのアップロードは注意が必要です。Google広告ヘルプによると、2026年6月15日以降これらのアップロードはGoogle Ads APIではブロックされ、Google広告データマネージャー(Data Manager API)経由に一本化されています。CRMと連携してリードの成約データをアップロードする実装をこれから行う場合は、Google Ads APIではなくData Manager API、またはHubSpotやSalesforceなど対応済みの連携ツール経由での実装を前提に設計する必要があります。
オフライン コンバージョンのインポートとの違い
「オフライン コンバージョンのインポート」は、広告のクリックに割り当てられるGoogleクリック ID(GCLID)を軸にして、サイト外で発生したコンバージョンをGoogle広告に取り込む従来からの仕組みです。営業担当者やコールセンターが、問い合わせ時に取得したGCLIDを商談管理シートやCRMに記録しておき、成約時にそのGCLIDとコンバージョンの情報をまとめてインポートします。
一方「リードの拡張コンバージョン」は、GCLIDに加えてハッシュ化したメールアドレス等のユーザー提供データも一緒にインポートできる点が異なります。Google広告ヘルプでは「オフライン コンバージョンのインポートがアップグレードされたもの」と位置づけられ、GCLIDの記録に抜け漏れがあってもメールアドレス等の照合でコンバージョンを補完できる可能性がある点、クロスデバイス計測に対応しやすい点がメリットとして挙げられています。オフライン コンバージョンのインポートを新規に導入するのではなく、リードの拡張コンバージョンへ移行することが案内されています。
実務上は、営業担当者がCRMに入力した「受注」「成約」ステータスの変更をトリガーに、コンバージョンのアップロード処理を行う運用が一般的です。受注データの活用を仕組み化し、CRM上のステータス変更とアップロードを連携させておけば、営業側の入力精度がそのまま広告の学習精度に反映されます。GCLIDの記録や受注ステータスの入力が担当者の手作業に依存している場合は、実装方式の選定より先に、その運用フローを固めることが重要です。
他媒体の類似機能との比較|Meta 詳細マッチング・コンバージョンAPIとの違い
ハッシュ化した自社データを媒体側のログイン情報と照合し、コンバージョン計測を補完する考え方は、Google広告に限った仕組みではありません。MetaのコンバージョンAPI(CAPI)や詳細マッチング(Advanced Matching)も同じ思想に基づく機能です。
Metaの詳細マッチングは、フォーム等から取得したメールアドレスや電話番号をハッシュ化してMeta側に送信し、Facebook・Instagramにログイン中のユーザーと照合する仕組みで、自動有効化と手動指定の2通りがあります。コンバージョンAPIは、ブラウザ経由のピクセル計測とは別に、広告主のサーバーからMetaのサーバーへ直接イベントを送信する仕組みで、送信する顧客情報の多くはハッシュ化が必須です。ブラウザの計測制限を受けにくいサーバーサイド計測という位置づけは、GoogleのAPI経由の拡張コンバージョンと近い性質を持ちます。
項目 | Google 拡張コンバージョン | Meta 詳細マッチング/コンバージョンAPI |
|---|---|---|
データの照合先 | ログイン中のGoogleユーザー | ログイン中のFacebook/Instagramユーザー |
ハッシュ化 | SHA-256でハッシュ化して送信 | 詳細マッチングはSHA-256、コンバージョンAPIも主要項目はハッシュ化が必須 |
ブラウザ計測との関係 | 既存のコンバージョンタグを補完 | 既存のMetaピクセルを補完 |
サイト外取引への対応 | リードの拡張コンバージョンで対応 | コンバージョンAPI経由のオフラインイベント送信で対応 |
設定経路 | Googleタグ/タグマネージャー/API | ピクセル(自動/手動)/コンバージョンAPI |
いずれの媒体もハッシュ化によって生の個人情報を直接やり取りしない設計ですが、複数の媒体で個別に設定・確認していくと運用の手間は増えます。設定状況や計測結果を横断的に把握したい場合は、広告運用を一元管理できるツールの活用も選択肢になります。
導入時の注意点
拡張コンバージョンはハッシュ化したデータを送信する仕組みですが、送信元が氏名やメールアドレスといった個人データであることに変わりはありません。導入にあたっては、少なくとも次の点を社内で確認しておくことをおすすめします。
まず、管理画面で拡張コンバージョンをオンにする際は、顧客データに関する規約への同意が必須です。あわせてGoogleの顧客データに関するポリシーでは、広告主自身が保有するデータであること、共有・利用についてプライバシーポリシー等での開示や法律上必要な場合の同意取得、健康情報や信条など機微な情報を用いないことなどが求められています。自社のプライバシーポリシーが拡張コンバージョンでのデータ利用を含む記載か、事前に確認しておく必要があります。
また、社内に法務・情報セキュリティ部門がある場合は、ハッシュ化した個人データを広告プラットフォームに送信する処理が、個人情報保護法や自社の取り扱い方針と整合しているか確認しておくと安心です。ハッシュ化は元データを復元できない一方向の変換ですが、個人情報の第三者提供にあたるかの整理は事業者ごとの判断が必要なため、本記事の解説だけで判断せず、必要に応じて法務担当者や顧問弁護士に確認することをおすすめします。
最後に、リードの拡張コンバージョンを使う場合は、リードフォームを扱う営業・サポート部門にも、どのデータをいつ取得し、どのタイミングでコンバージョンとして計上するのかを共有しておくと、運用開始後の認識の齟齬を防げます。
よくある質問
拡張コンバージョンとカスタマーマッチは何が違いますか?
目的が異なります。拡張コンバージョンは、既に発生したコンバージョンの計測精度を高める機能です。一方カスタマーマッチは、保有する顧客リストをハッシュ化してアップロードし、そのリストに基づき広告を配信・除外するターゲティング機能です。「計測を補完する」拡張コンバージョンと「配信対象を決める」カスタマーマッチは別機能として理解しておく必要があります。
設定後、どのくらいで効果を確認できますか?
Google広告ヘルプでは、拡張コンバージョン(ウェブ向け)をGoogleタグで設定した場合、目安として設定から約30日後にコンバージョン アクションの表で影響を確認できるとされています。反映には一定の期間がかかる前提でスケジュールを組んでおくとよいでしょう。
メールアドレス以外にはどのようなデータを使えますか?
Google広告ヘルプでは、メールアドレス(推奨)・氏名・住所・電話番号のうち少なくとも1種類の送信が必須とされています。複数の項目を組み合わせると、照合できる可能性が高まるとされています。
Google Ads API経由の設定は今でも使えますか?
拡張コンバージョン(ウェブ向け)は、本記事執筆時点(2026年8月)でもGoogle Ads API経由の設定が案内されています。ただし、リードの拡張コンバージョンやオフライン コンバージョンのインポートのアップロードは、2026年6月15日以降Google Ads APIではブロックされ、Data Manager API経由への移行が案内されています。新規にAPI実装する場合は、対象がウェブ向けかリード向けかで選ぶべきAPIが異なる点に注意してください。
オフライン コンバージョンのインポートを使っていますが、乗り換える必要がありますか?
Google広告ヘルプでは、オフライン コンバージョンのインポートは利用を継続できるものの、リードの拡張コンバージョンが備える精度向上やクロスデバイス計測などの機能を持たないレガシーな位置づけとされており、リードの拡張コンバージョンへの移行が案内されています。乗り換えのタイミングは、CRMや商談管理の運用フローを見直す機会にあわせて検討するとよいでしょう。
まとめ
拡張コンバージョンは、自社サイトやリードフォームで取得したファーストパーティデータをハッシュ化してGoogleに送信し、既存のコンバージョンタグでは捕捉しきれない計測を補完する機能です。ウェブサイト上で完結する取引を対象にした「拡張コンバージョン(ウェブ向け)」と、フォーム獲得後にサイト外で成約するリードを対象にした「リードの拡張コンバージョン」の2種類があり、設定経路はGoogleタグ・タグマネージャー・APIの3通りです。特にリードの拡張コンバージョンやオフライン コンバージョンのインポートは、2026年6月15日以降のAPI移行など仕様変更が続いているため、導入・改修時は必ず最新のヘルプで手順を確認してください。
また、拡張コンバージョンの導入はハッシュ化されているとはいえ個人データを扱う施策のため、社内の顧客データに関するポリシーやプライバシーポリシーとの整合を事前に確認したうえで進めることをおすすめします。
Cascadeは、Google・Meta・LINEヤフーなど主要広告媒体を一元管理し、HubSpot・Salesforce・CSV取込による受注・商談データを広告成果と突き合わせて分析できる広告運用プラットフォームです。拡張コンバージョンやコンバージョンAPIで整えた計測データを、受注ベースの分析や媒体横断の予算判断につなげたい場合の選択肢の一つです。







